●平成26年度徳島県立三好高等学校活動内容(抜粋)
 
   研究テーマ:「地域と連携したビジネスの諸活動と経済・金融」
 
 【1】はじめに
 本校は昭和21年に農業高校として開校し,平成28年度に創立70周年を迎える。現在,生徒数144名(男子77名,女子67名),農業科(食農科学科と環境資源科)と商業科(情報ビジネス科)が併設された県西部の専門高校として地域に根ざした学校作りを目指している。
 農業科の生徒は,野菜・果樹の栽培,家畜の飼育,酒造やブロイラーの燻製・パウンドケーキやジャムの製造などの食品加工,さらに,しいたけやホンシメジなどのキノコ類の培養,林産加工,草花の栽培や利活用などといったあらゆるジャンルに関する知識・技術を学習し,実習をともなう体験を積んでいる。また,休日には地域への貢献活動を展開するとともに県下各地で農産品販売等の諸活動に意欲的に取り組んでいる。さらには,毎年,次々と新しい研究開発を考案し,先進的なプロジェクト活動を行っている。 
 商業科の生徒は,商業に関する基礎・基本をもとに,とくに本校では情報処理に関する専門的な知識・技術を学んでいる。検定取得率も高く,全国商業高等学校協会主催の上級検定に励む(全国商業高等学校協会主催の検定1級取得率は,第3学年で28%)とともに国家試験取得にも果敢にチャレンジし結果を残している(ITパスポート試験8名合格)。平成8年度の再編統合以来,商業科と農業科がそれぞれの学科の特性を生かしながら,生産から販売までの学習ができることを最大の強みとして捉え,地道な活動を行っている。
 部活動では,情報処理部がワープロ競技会県大会6年連続団体優勝,情報処理競技会個人優勝を成し遂げ,全国大会常連校として県下に名を馳せている。また,ハンドボールや弓道などの運動部も盛んで,レスリング部は毎年全国大会に出場している。小規模でありながらも,専門高校として,学習や行事・特別活動等の多方面から,生徒自身に誇りと自信をつけさせる教育を展開し,ビジネス社会で逞しく生き抜いていく人材の育成に力を入れている。
 しかし,折からの生徒数減にともない,本校は平成29年度から池田高校の分校として新たなスタートを切る。そのため,商業科は平成27年度より募集停止となり,残すところあと2年間の商業教育を展開するだけとなった。このような状況下のもと,今回,金融教育研究の指定をいただき,平成25年度から26年度までの2年間,手探りのまま進んでいった感が否めないが,現在でき得る限りの金融教育を展開してきた。試行錯誤しながら本校商業科で取り組んだ内容を記述したい。

 
 【2】研究の概要
目的と研究内容については25年度実績をご覧下さい。
  
 【3】最終年度の取組
 (1)販売実習「プチ・へそっこ」における取組内容と成果 
 
対象学年 第3学年
実施時期 5月上旬から7月上旬まで計8回
取組内容

成   果
 平成26年度も前年度と同様に販売実習を実施した。(詳細内容は25年度実績をご覧下さい)
 「まごころ市」「東西祖谷出張販売」は計画通り実施できたが,「阿波池田銀座街出張販売(25年度実績をご覧下さい)」については,12月上旬の計画であったため,積雪に見舞われ残念ながら実施できなかった。
 しかし,本年度も,農業科への授業参加,特設の授業形式実習,生徒情報交換会等に参加させてもらい,販売においても,金融・金銭教育の視点や消費者教育の視点を重視させながら運営にあたらせた。例えば,正確な金銭授受を行うために,代金預かり時には必ず「○○円お預かりいたします。」渡す時には「おつり○○円です。お確かめください。」と受け渡し金額を大きな声ではっきりと伝えるなど,徹底して指導した。 
 特に本年度は,運営にあたる第3学年の生徒が比較的消極的で協調性に欠ける生徒が多い集団であるため,キャリア教育の視点からもビジネス社会で逞しく生きていけるよう,自ら考え自発的に行動する主体性,お客様や友達に奉仕する気遣いや機転,お客様第一主義の考え方,倫理観,働く意義等にも視点をあて,人間力の向上に努めさせた。準備の段階から入念に時間をかけ,グループ毎に運営はさせたが,第1回目のまごころ市は全員で販売所に出かけさせ全体像を見せた。その後の反省会でも,お客様にどう販売していくかを生徒自らに考えさせ,グループディスカッションに時間を割いた。
 販売実習という体験をとおした実学的な金融教育を押し進めた結果,生徒達は非常に成長できたと言える。生徒の感想を次に示すが,協調性や協力・奉仕の大切さや勤労観・職業観を確実に認識した内容を如実に述べたものが多く見られた。貴重な体験ができ,専門高校としてビジネス社会で通用する人材になれるよう,少しでも生徒の成長に繋がる事業ができたことに満足したい。
                 < 生 徒 の 感 想 >
 ・まごころ市を終える頃には,まとまりのないホームルームが1つになった。
 ・仲良くなれた。
 ・やっとホームルームらしくなった。
 ・失敗してもみんながカバーしてくれた。
  最初は不安だったが,次のまごころ市が楽しみになった。
 ・責任感があることがわかり友達が好きになった。
 ・お客様の目線に従い動くことができ嬉しかった。
 ・機転を利かせて働くことは難しかった。
 ・働くことは大変だと思った。
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 (2)授業科目における取組内容と成果 
 
授業科目 「課題研究」
対象学年 第3学年
取組内容

成   果
@ 販売実習(「プチ・へそっこ」
A
 
 
 

地元に根ざすビジネスアイディアを考案
本年度は,「徳島県文化の森」の中・高生集客に向けた効果的なアイディアを考案し,第5回徳島県高校生ビジネスアイディアコンテストで発表し,最優秀賞と県知事賞を受賞した。三好高校商業科創設以来,初の快挙を成し遂げ,生徒は勿論のこと,教員も大喜びであった。
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授業科目 「総合実践」
対象学年 第3学年
取組内容

成   果
 商業教育の集大成として,「総合実践」は位置づけされている。
 本年度は,
  ・組織で働く意識
  ・正しい検閲の受け方
  ・正確な給料計算や会計帳簿の丁寧な記帳方法
等を重点的に指導した。課題研究等で培った所属観や勤労観が功を奏し,欠席も少なく,組織の一員としてチームで協力して働く自覚が見られた。
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授業科目 「情報処理」
対象学年 第2学年
取組内容

成   果
 消費者に情報を正確かつ効果的に伝えて説得し,購買意欲を促す販売促進活動について学習するともにその深化をはかるため,本校販売品のPOP広告を製作させた。その際,作る側の利益だけでなく,お客様の立場に立った虚偽や誤解のない表示方法を考えた責任あるものを考案すること,効果的なプロモーション活動の方法と消費者問題について考えさせること,将来,ビジネス社会で活かすことのできる技術の習得と併せて企業の社会的責任を担った社会人となるためのキャリア教育に繋がる学習であることを認識させ,授業を試みた。本校教員が指導した製作物をもとに,途中,外部講師を招聘しご助言・ご指導も仰いだ。
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授業科目 「簿記」
対象学年 第2学年
取組内容

成   果
  財務諸表,特に2区分の損益計算書作成にあたり,売上総利益が計算された後,給料が計上されるしくみを理解させ,正しい勤労観と金銭教育を実践した。また,日頃から簿記問題集を使った記入しか行っていなかった伝票起票の学習が,ワンライティングシステムを導入した教材を購入し,実際の起票を体験することができたため,関連した帳簿組織のあり方や伝票の累計計算と勘定計算の一体化が図れ,伝票を使った実務上の経理事務に近い内容を実習することができた。
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授業科目 「ビジネス実務」
対象学年 第2学年
実 施 日 平成27年3月18日
取組内容

成   果
 経済の主体である企業や家計・財政のしくみを考えながら,現在の地域経済が抱える諸課題に関心を持ち,それを自分の生活と関連づけ様々な課題解決に向けて自ら合理的・主体的に考える態度を身につけさせることを目的とし,地域経済活性化に向け尽力されている企業の代表者を招聘し,高校生が取り組むことのできる身近なビジネスアイディアを生み出す考え方を学習させた。
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授業科目 「ビジネス基礎」
対象学年 第1学年
取組内容

成      果
 ビジネス社会で通用するためのキャリア教育の一環として,マナー習得をさせるにあたり,ビジネスの様々な場で使われる礼について,角度や使い分けを説明し実際に練習を積み,全員の前でテストし,自己評価,相互評価をさせた。
 また,売買契約の締結や履行についての理解の深化を図るために,伝票や納品書,手形などの書類を実際に記入し,その後,販売の模擬体験をさせる授業を展開した。その際,対面による代金支払い(模擬通貨や手形)と商品授受の作法を十分練習させ,商品や通貨を大切に扱う心を育てるとともに,売り手・買い手の正しい金融・金銭感覚を身に付け,買い手の立場に立った接客ができるようビジネスマナーの修得に励ませた。
 書類作成では,取引の流れを考えながら実際に帳票類を記入させ,特に,一度の記入によって,@必要帳簿の即時理解ができること,A諸帳簿への転記(貼付)が容易にできること,B手間がかからず非常に簡単に取引できること等,ワンライティングシステムを利用することによって,煩雑な帳簿類の整理が簡便にできる実務上の素晴らしさを理解するよう指導した。
 販売の模擬体験では,@商品の袋詰めや手渡し方,A商品代金授受,Bお釣りの手渡し方などを自ら工夫し,細部にわたって接客マナーを考えた行動がとれるよう指導した。
 
               <生 徒 の 感 想 >
 チェックライターを使った約束手形の作成はとても楽しく,実際に印字された文字を見たとき,こうして実際に偽造防止をはかるのだと興奮した。あわせて,書き加えられない漢数字も習ったので,機械はなくても正確に書くことによって実務上では通用するのだと思い,漢字もしっかり覚えようと思った。また,納品書や伝票を書くのは難しく何回も書いて練習することによって理解できると思った。
 また,販売実習では,レジ袋の先をクルクルまとめて相手に手渡すようにするのは何回やっても上手くできなかった。しかし,アルバイトをしている人から教わり少しだけできるようになった。教科書だけでなく実際に授業で体験してよかった。今後,販売しに行く際に活かすことができると思う。
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 (3)キャリア教育における取組内容と成果 
 
実施事業 講演会
対象学年 第1・2学年全員
実 施 日 平成27年3月19日
取組内容

成  果
 本校生が実際に就職している企業の人事担当者に「企業の求める人材 高校までに身につけるべき事」として講演いただいた。自分の将来をイメージし,なりたい自分と現在の自分のギャップを捉え自己を知り,今なすべきことを考えさせるよい機会となった。
                < 生 徒 の 感 想 >
・自分は企業が求める人材に1項目も当てはまらなかった。残念に思う。
・企業が求める人材がわかったので,そうなるよう努力しようと思った。
・挨拶やコミュニケーション能力は絶対に必要なので,
 今後の学校生活でしっかりと大きな声で先生方や友達に挨拶しようと思った。
・面接が就職試験では重視される。話すのが苦手なので不安である。
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実施事業 課題研究発表会
対象学年 1・2学年全員
実 施 日 平成27年3月20日
時   間 2時間
取組内容

成  果
 農業科で研究・実習している内容を聞き,商業科で来年度実施する校内販売の商品を理解させるとともに,他学科の取組内容を知り同じ学校での6次産業化への今後の商業科のあり方を考えさせる目的で,本校農業科の課題研究発表会に参加させた。
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実施事業 その他
取組内容

成   果
 校内漢字検定(年間11回)や学び直し学習「マナトレ」の(週1回)実施,キャリア教育課による進路だよりの発行,各教科によるアクティブラーニング(グループ学習)の導入等,様々な取組を本校教職員が生徒のために推進し,ビジネス社会で生き抜く骨太の教育を粘り強く展開している。
   
 【4】まとめ
   研究指定を受け,現在まで三好高校が培ってきた地域との連携をもとにしながら,地域経済・金融の活性化に繋がる取組をより積極的に発信すること,また,校内では,授業科目の中で金融・消費者問題について学ぶことによって,生徒自らが消費者として賢く生きていくために日常生活を振り返る機会になることを目標に,本校教員が粘り強く指導してきた。商業科の各教員がそれぞれの授業の中でできる金融教育を熱心に盛り込み生徒への喚起を促し,本校でできる限りの金融教育が展開できたと考える。何より私自身が,この研究を通して商業教育の魅力を再確認できたことが嬉しい発見でもあった。つまり,キャリア教育を含めた金融・金銭教育や消費者教育は,商業教育が最も得意とする分野である。商業教育そのものが,元来,金融教育であり,時代が求める教育を,商業教育は普遍のものとして従前から展開していたこと等に気づかせていただけた。ここ数年,「商業教育の活性化」を言われ続けている。その背景として,高校卒業後も本来の商業的な就職に結びつかない社会情勢や中学生の商業科進学率の低下,商業高校の減少,商業教育の衰退等,様々な要因があげられるが,現場で商業科教員は,魅力ある教育の推進に向け,模索し続けている。そんな悩み迷える教員に,今回の研究は明るい光をあてていただけた感がする。しかし,小・中学の義務教育や高校の普通科教育に金融教育の必要性を説くことは,反対に商業教育が不必要であるということでもある。様々な思いを抱えながら2年間研究を重ねてきた。どちらにしても,三好高校の商業科は前述したとおり,もうすぐ幕を閉じようとしている。あと数年間,商業科として地域の方々の意見を参考に様々な案が呈示でき,金融・経済の大いなる活性化につながるよう活動できたらと考えている。地域に愛される高校を目指して。
                        
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