●平成25年度徳島県立三好高等学校活動内容(抜粋)
 
 研究テーマ  「地域と連携したビジネスの諸活動と経済・金融」
 
 【1】はじめに
  本校商業科では,平成8年度の再編統合以来,商業科と農業科がそれぞれの学科の特性を生かしながら,生産から販売までの学習ができることを最大の強みとして捉え,ビジネスに関する様々な活動を試みてきた。生徒たちがこれらの体験的・実践的活動をとおして学習を積み重ねることにより自信と誇りを持つことができるようになればと考え,農業科と協力しながら,地域に根ざした学校作りを目指して地道に取り組んでいる。その結果,今日では地域からも大いに期待され,地域の様々なイベントには頻繁に参加依頼が舞い込むといった喜ばしい現状である。
 
 【2】研究の概要
 (1)目 的
 金融・経済が,私たちの生活にとって深い関わりがあることを理解させるとともに,正しい知識を習得させ,消費者トラブルの回避や将来の生活に生かすことができる力を身につけさせる。また,学校生産物を使った商品開発と販売促進を行い,収支報告書の作成と顧客満足をとおして,コストパフォーマンスを意識させる。

 (2)研究内容
 校内販売所「まごころ市」や出張販売の活動をとおして,商品開発や販売促進の方策を考える。迅速・正確な会計帳簿の作成や,収支報告書および決算書の作成で,健全なお金の流れや使途について学習する。授業では,消費者問題や消費者トラブル,代金の決済方法などを学習し,金銭や物に対する健全な価値観の育成をはかる。
  
 【3】本年度の取り組み
 (1)販売実習「プチ・へそっこ」における商業科の取り組み
   @ 取り組み内容
    本校では,平成15年度より農業科の協力で農業科の生徒が作った安心・安全な農産物や加工品を商業科の生徒が日ごろの感謝を込めて様々な場で地域に奉仕し販売する店舗を「プチ・へそっこ」と名付けている。
 本年は,3形態の販売
「まごころ市」「東西祖谷出張販売」「阿波池田銀座街出張販売」を実施するに至った。販売に際し,特に留意したことは,

 ◆◇◆◇◆◇◆  金融教育の視点から  ◆◇◆◇◆◇◆
   @ しっかりとした金銭感覚を養いながら販売業務に従事させること。
   A 売上後の正確な収支報告書を作成させること。

 ◆◇◆◇◆◇◆ 消費者問題の視点から ◆◇◆◇◆◇◆
< 特に買ってくださる地域の方々(消費者)の立場に立ち >
   @ 豊富な商品知識で十分な説明責任を果たすこと。
   A 接客マナーを徹底させること。
である。
 まず,第3学年は商品知識を身に付けるため,農業科教員の協力を仰ぎ,下表の4つのグループ(野菜・林産加工・食品製造・草花)に分かれ,農業の授業参加,特設の授業形式実習,生徒情報交換会等に参加させてもらった。商品理解をすることは勿論であるが,「大地とともに心を耕して農産物や加工品をつくる」というものづくりへの農業科の熱い思いを汲み取り体験できる機会でもあった。
 
 専  攻  実   習   内   容
 野菜  トマトの芽欠き・うね立て 
 林産加工  シイタケの植菌
 食品製造  パウンドケーキの製造
 草花  は種(種まき)と移植

 体験後,個々の発表をとおしてクラス全体で商品知識を共有させたうえ,効率的にどう接客するか等のマーケティング技術もディスカッションさせるなどした。その際,特に買ってくださる方(消費者)に安心・安全な商品であることや製作者の思いを語ることができるよう指導した。また,季節毎に商品は異なってくるため,POP広告や宣伝ポスター,商品カードなどは,販売の都度作り替えなければならないが,販売促進につながるものを考案させ製作させた。その他,服装検査やマナー実習等も徹底して行った。
 最初は生徒たちに戸惑いも見られたが,自らが順応しながら年間を通じて能動的に活動していた。また,毎回,自主的に係を明確にし,適正な商品売買管理を心がけ,正確な現金授受による収支報告や売上一覧表を作成し責任を全うできていた。

<詳細内容>
 「まごころ市」(校門前販売)
    ・対  象 学  年 : 第3学年
 ・実施期間、回数 : 5月下旬から10月まで計8回
    平成21年から続いている本校独自の事業で,正門前に設置した販売所で毎週水曜日の11時45分〜12時20分に地元地域の方々に,農業科の生徒がつくった新鮮な農産物や加工品(鶏卵や季節の野菜・草花,パウンドケーキ,ジャム,クエン酸飲料等)を販売する活動である。本年は「課題研究」の授業の一環として,計画・準備・実施・検討を試みた。人数の少ない中,6人3グループで毎週交代しながら,3学年商業科全員(ビジネス類)で実施した。特に本年は,積極的で前向きな生徒がリーダーとして全体を統率し,販売後はグループ反省会を持ち,正確な金銭授受の仕方や接客方法等,熱のこもったディスカッションを重ね,次回グループへ引継ぐ的確なアドバイスを綿密に話し合うなどクラス全体でまごころ市を成功させようと試行錯誤していた。
 
   <生徒の感想文 抜粋>
 オープンした初日にテレビ局の取材を受けたり,大雨でもお客様が来る限り店は開けるのだという商売魂でカッパを着ながら接客したり,お客様が多くても少なくても変わりなく校門前で元気よく応対したりしました。(略)まごころ市では私たちみんなが店長です。そこで,一人ひとりがビジネスの授業で学んできたことを活かしながら,どうすればお客様に満足していただけるのか考えました。商品の陳列方法や効果的なPOP広告,雨の日にお客様にかかる雨を少しでも減らす工夫など,戸惑いながらどうにか運営していきました。失敗してもお客様はいつも「大丈夫」と優しく励ましてくださいます。私たちがまごころ市を運営できたのも温かい地元地域のお客様のおかげだと思っています。
 まごころ市を経験して,私たち一人ひとりが経営者になることができました。後輩たちには,私たちが卒業しても,今以上に素晴らしいまごころ市を運営してほしいと思っています。
 
 
 A 成果と課題 
    生徒たちを観察すると,ただ売るだけでなく堂々と説明に挑み,臆することなく接客していた。これは,実体験による商品への知識が,自信となって現れた結果だと思われる。特筆すべきは,例年に比べ生徒自らがお小遣いを奮発して自身や家族に対して商品を購入していたことだ。その生徒個々によると思われるが,消費者として,「安心・安全な商品」という中身を認知し納得したうえでよいモノを賢く購入する考え方,すなわち消費者教育が浸透したとも言える。また,取扱商品を非常に大切に扱ったことや,来客が望める限り,大雨の日でも積極的に運営し,お客様に傘を手向けながら販売した心遣いも消費者教育の成果だと言えよう。
 今後の課題としては,商品開発や販路拡大に向け,地域の方々の意見を参考に商業科として様々な案が呈示でき,金融・経済の大いなる活性化につながるものを模索できたらと考えている。

 (2)交流学習における商業科の取り組み
  @ 取り組み内容 
 ・テーマ : 「かしこい消費者になろう」
 ・対  象 : 第3学年
 ・実   施 : 11月28日

   本年は,消費者教育推進事業の一環として,地元の箸蔵小学校児童を招いて本校生が消費者教育の授業を展開し交流を図った。農業科で収穫体験,商業科では「かしこい消費者になろう!」をテーマに,生徒自ら,手作り資料を用いて運営した。講義形式を取りながらも,小学生の反応を見ながら発問に対し挙手させるなどし参加型の体系で試みる工夫をした。授業内容は,買い物上手になるための考え方や賞味期限・消費期限の違い,成分表示の見方(三好高校の加工品使用),様々な表示マークの説明等であったが,最後に,エコ確認チェックシートを使って地球環境を考えさせ,買ったモノを最後まで大切に扱う必要性を教えた。
  A 成果と課題
   生徒たちは小学生に教えることにより,消費者問題および消費者トラブルについて学習する機会を得られ,消費者教育のパソコンサイトから多数の小学生向けへの資料を取り出すなどし熱心に下調べができた。
 また,準備の段階から,今回の対象が小学4・5年生という自分たちの年齢より下の子どもに接するために,出迎えの仕方やお土産カードの作成なども考え,授業においても,小学生に理解できる言葉の表現方法を考えたり,見やすい資料作りに努めたりし,一人ひとりが創意工夫をしながら事業に取り組んだ。この経験から,言語活動の充実がはかられると同時に様々な世代への人間関係調整能力の養成に役立つと考えられる。
 教えることによって様々な知識は豊富になったが,反省点としてあげるとすれば,小学生に対する講義であったため当事者意識に少し欠けるように見受けられた点だ。同時に高校生向けの教材も用いてより生活に密着したエコ活動等も考えさせるべきであった。今後の課題である。

 (3)授業科目における商業科の取り組み
  @「総合実践」第3学年
   卒業後,経済社会を担う社会人として即戦力になる人材を育成すべく,始業・終業時の挨拶・礼儀作法にはじまり,仕入から売上に伴う利益の概念や給料計算を教えた。また,模擬商品の販売をとおしてコスト削減の現実的な方策を自ら提案させ(既存の物品のリサイクル,消耗品の扱い方法等),組織の一員としてチームで協力して働く自覚を促した。
  A「簿記」第1・2学年 
 企業は利潤を生み出すことを目的とし,売買活動を主に利益をもたらす概念の指導,とくに,売上,売上原価,売上総利益,当期純利益の計算方法や企業側の人件費に要する多大なコスト概念を理解させ正しい勤労観と金銭教育を指導した。
  B「ビジネス基礎」第1学年 
 代金決済の方法について詳しく学び,クレジットカードや電子マネーの利用上の留意点について学習した。また,銀行等の金融のシステムを学び家計や企業とつながったお金の流れによる経済の仕組みを理解させた。他にも,ローンや預金に不可欠な利息の計算方法(単利法と複利法)を学び,金融教育は勿論のこと,消費者問題としても生活に綿密に結びついていることを理解させた。
 【4】本年度の反省
    本年は,今研究で,現在まで三好高校が培ってきた地元地域との連携をもとにしながら,地域経済・金融の活性化に繋がる取り組みをより積極的に発信すること,また,校内では,授業科目の中で金融・消費者問題について学ぶことによって,生徒自らが消費者として賢く生きていくために日常生活を振り返る機会になることを目標に,本校教員が粘り強く指導した。初年度ということもあり手探りのまま進んでいった感が否めないが,本校商業科で現在できる限りの金融教育が展開できた。まず,校外での活動は計画通りに実施し成果を上げ,校内では商業科の各教員がそれぞれの授業の中でできる金融教育を熱心に盛り込み,生徒への喚起が促せた。そこで,次年度は本校の教育を深めるためにも,金融広報委員会のお力もお借りしながらより専門的な教育を進めていきたい。
  
  
                        
過去の一覧