●平成23年度小松島市新開幼稚園活動内容(抜粋)
研究主題・複主題及び研究主題・複主題設定の理由については22年度実績を御覧下さい。
 実践事例
事例1 金銭教育のアンケート実施
  金銭教育のアンケート内容
 
                                               ( 複数回答有 )
       設    問     答   え  22年度  23年度
(1)お子様に,親からお小遣を与えていますか。
 
毎日与えている    0%    0%
ときどき与えている   30%   27%
与えていない   70%   73%
(2)お金の大切さについて,ご家庭でお話されたことがありますか。
 
話している    0%   32%
ときどき話している   30%   63%
話していない   70%    5%
(3)お金以外で,「もったいない」気持ちを育てるためにご家庭ではどんなことに気をつけられていますか。
 
電気を消す   85%   77%
水を大切にする   85%   77%
食べ物   92%   73%
その他    0%    9%
(4)子育てで,リサイクルを利用されているものはありますか。ご迷惑でなければお聞かせください。



・お風呂の水を洗濯や花の水やりに利用する。
・戴いたものは全て大切に使っています。
・ティッシュの箱の裏はメモ用紙に,広告は工作,白い広告は落書き用紙にしている。
・着られなくなった服は友達の子どもにあげている。
・衣服や玩具は従兄弟からいただいている。
  
 
  《 反省・考察 》
 お小遣いは与えていない家庭が多く,与えている場合は祖父母や親戚から戴くことが多く,貯金をしているようである。家庭訪問での話し合いでは,お手伝いをして労働の対価として与えている家庭が1名あった。
 建売住宅に転居して間もない家庭が多く,水道・電気・紙など無駄に使わないよう幼児に躾ている。
 幼児の玩具や衣服に至るまで,戴いたり節約している生活を伺うことができる。わが子に「がまん」,「節約」させることを大人は躾としているが,幼児は理解しているだろうか。園生活では水道水の出しっぱなしやトイレのスリッパのぬぎっぱなしが多い。家庭で出来ているが,園で出来ていないようにこのアンケートから読み取れる。
 お金についての家庭での話し合いは増えているので,金銭教育の成果と思われる。幼児の中でもお金の種類が,遊びや買い物体験の中で昨年と比較すると,よく理解している。
 
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事例2 −「スイッチ忍者」−
 
紙芝居『スイッチ忍者』のお話
 電気をつけっぱなしにしていると,スイッチ忍者が現れて電気のスイッチを切って行くのだ。読んでいると「つけっぱなしにしたらもったいないよなぁ」「あたしちゃんと消しとるよ」などの言葉が聞かれた。電気を使い過ぎて国の電気がなくなってしまった宇宙人が出てきたときには「家で電気がつかなくなったことがある,これって電気をつけっぱなしにしとったからかなぁ」,「お店でも電気が消えたことがあるよ」等,自分たちの体験を口々に話し出した。そこで,「電気ってただじゃないんよ,電気を作ってくれる人がおるから,お金を払って買いよるんよ」という話をすると,「ほんまなん?」と驚いた様子の幼児や,「ほんなん知っとるよ」という幼児など,様々な反応が見られた。
 
《反省・考察》
 子どもたちも日頃家庭で電気のつけっぱなしについてはもったいないと言われているようで,読んでいる途中で電気に関する様々なエピソードが聞かれた。
 しかし,なぜもったいないのかをきちんと理解できていない幼児もいた。電気はお金で買っていることを知り,電気を使い過ぎるとなくなってしまうという話に自らの体験したことを重ね合わせる事で,電気がずっとあるものではない,つけっぱなしがもったいないということがわかったのではないだろうか。また,この紙芝居を見たことで「電気を消す=スイッチ忍者になる」という構図が出来上がり,楽しみながらエコ活動に取り組めるきっかけとなった。]
 
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事例3 −グリーンピースの販売から,誕生会のおやつ買い物体験−
    昨年の秋グリーンピースの種まきをし,収穫の時期を迎えた。「こんな豆食べたことある?」,「このグリーンピースどうしようか?」と子どもたちに尋ねながら,豆の皮を剥いていると,「豆ご飯にして食べたい!」「みんなで分ける?」といろいろな意見が出てきた。
 「このお豆を売るとお金儲けできるよ。みんなのおやつが買えるよ」と提案する。「お店屋さんして売ろうか」というと「ママたちに売ろう!」,「それいいなぁ」と話し合いがまとまり,園で販売することになった。
 幼児がグリーンピースをパックに詰め,「1パックいくらで売ろうか?いくらくらいだったらお家の人かってくれるかなぁ」と尋ねると,「1円がいい」「500円は?」と口々に話し出す。「これだけで1円だったら安すぎるし,500円だったら高くて買ってくれへんのとちがう?」と教師が声をかけると,「じゃあ,50円にしよう」という案が出て価格が決定した。年長児が値段を書いて貼り,販売していることがわかるように看板も作った。
 「いらっしゃいませ,グリーンピース50円ですよ」と年長児が中心になって売り子をする。年少児も年長児の横に並んで真似をしているが,自分の保護者が買っているのか気になるようで,買っていないと「買って」とせがむ姿も見られた。J児の祖母は孫がグリーンピースを売っていることを知ると,5パックも買って協力していただいた。
          ☆売上合計 50円×21パック=1,050円
 この売り上げ金も含めて,5月の誕生会は近くのコンビニに,お菓子を買いに行くことになった。事前の話し合いで50円玉を見せ,10円が5枚集まっても50円になることを知らせた。また,50円ちょうどにならなくてもいいので,少ない買い物になった時はおつりをもらうよう知らせた。

《 反省・考察 》

 
 幼児たちはこの経験を通して,物を買うにはお金が必要であり,売り手側もお客さんがいくらなら買ってくれるかを考えて値段をつける必要があることを知る体験となった。
 家庭の実態として,欲しいものがある時に家族の買い物と一緒に会計をしてもらうといったことがほとんどであり,自分でお金を持っての買い物はしたことがない幼児が多かった。そのため買い物体験では,50円で買えるものが意外と少ないこと,物の値段を考えて計画的にお金を使うことの大変さを知り,有意義な買い物ができたと思う。
また,商品の対価としてお金を支払うことは分かっていても,家庭で幼児自身にお金のやり取りをしての買い物体験がなく,おつりをもらい忘れるといったことが見受けられた。
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事例4 −ロバのパンを一緒に食べよう−
   毎月1回,本園で就園前の0歳〜3歳までの幼児を対象に未就園児園開放を行っている。在園児と一緒に遊び,ダンスやペープサートを見たり,お話絵本を聞いたりして一日を過ごす。
 今日は園児と未就園児と一緒にロバのパンを買い,お昼ご飯にすることとなった。園児は家庭から持ってきた110円のお金で好きなロバパンを選んで買う。
 パンを買う前から自分が欲しいパンを決めていたI児。「ぼくはチョコレートのロバパンがいい!」とT児が言い出すと,「ぼくも! ぼくもー」とA児,C児,M児が同調した。ロバのパンのおじさんに,「ジャムのロバパンください」,「いくらですか?」と尋ねたり,お金を支払うと「ありがとうございます」と挨拶をしたりした。
《 反省・考察 》
 近くにお店がなく,買い物に行くには車でしか行けない。移動販売するお店に幼児はあまり馴染みがないようである。
 スーパーマーケットへ行くとほとんどのものが揃い,コミュニケーションをとらなくても買い物が出来る。私たちが幼いときは,近所に駄菓子屋や八百屋等お店がたくさんあり,コミュニケーションをとりながら買い物をしていた。
 商品が揃い,機械化され,言葉で表現しなくても買い物が出来る時代に,積極的に金銭教育の中で表現していかないと,自分の思いとは違った所で,金銭トラブルや犯罪に巻き込まれることを,保護者も教師も伝えていかねばならない。
 
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事例5 大河原高原で風力発電を見学して    
   今年度も引き続き『もったいないばあさん音頭』を踊っている。昨年の新学期当初は『もったいない』という言葉を知らず,首をかしげていたS,A児たちは,S「せんせい,○○ちゃんが折り紙をもったいないことしとう」「水の出しっぱなし,あかんよ」など,もったいないという歌とともに『もったいない』と言う言葉が聞かれるようになった。
 3・11の震災後幼児と原子力発電所の事故のことや,風や水で電気が作れることも話した。大川原牧場に風で電気が出来る場所があると話すと「せんせい,S児のばあちゃんの近くにあるよ」。次々と周りの幼児が「牛の所行ったことある」と話が進み,保護者とも話し合ううちに,見学にいってみようという話になり,バス1台を貸切り近隣の幼稚園の園児とPTA役員とともに行くことになった。
 電力会社の職員さんからの話を聞き,大きい扇風機に驚くばかりであった。電力会社の職員さんから,小さな風力発電(かざぐるま)を幼児たちはいただき大喜びであった。
 園に帰ると,さっそくT,Q,S,P,O,A児が,かざぐるまを風車に見立てて風向きを考え,一番よく回る所を見つけ,「電気がいっぱいできるなあ」と電気を作ることをかざぐるまで見立てている。U児はそんな様子を見ながら,かざぐるまを手に持つのでなく,風力発電をイメージして,テラスの敷物にかざぐるまを突き刺した。かざぐるまがまわり電気が起こることを試している姿があった。
 
《 反省・考察》
園で金銭教育のアンケートをとると,水,電気,食べ物を大切にする気持ちは年齢に関係なく,大切にしようとする気持ちが保護者にある。
風力発電見学も過半数の保護者に参加していただき,風が電気に代わることに,またこの電力で徳島市全体の電力がまかなえることに驚いていた。幼児はかざぐるまをいただいて,風=電気ができる仕組みはわかったようである。
 

               ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
事例6 金銭教育講演会   
   講師:加渡 いづみさん(金融広報アドバイザー)    
 演題:暮らしの「もったいない」を考える
 家計簿をつけていますか?の問いに我が家の家計簿に分析がいる。毎月かかる固定費(水道・ガス・電気・ガソリン代・保険代等)が多い。毎月自由に使えるお金が少ない中で,かかる教育費と,かける教育費を夫婦間で話し合うこと。無茶はいけないし,続かない。
 節約は
 @財布の整理
 Aお金をくずすと早い。何に使ったか分からないお金を知る。
 B安くて済ませるものと,そうでないものがある。
 ライフサイクルコストとはそのものを使い続けるコストで見る。いいものを使って,修理して長く思い出を託する。安くていいものと将来の価値を考えて使うことが大切との講演をお聞きした。
    ≪保護者のアンケートより≫
講演を聞き金銭教育の必要性があると答えた保護者は72パーセント,少しは必要である18パーセントであった。
○話を聞き自分に当てはまることばかりでした。難しい言葉が少なく参考になることばかりでした。ぜひ実行してみようと思います。
○講演を聞いて今日から早速,実践できそうなことがあるのでためしてみようと思います。
○とても参考になりました。大学に行くことを想定してお金を貯めるのに頑張ります。
 
 
《 反省・考察 》

 2年間の金銭教育研究指定園として,2年という短期間のサイクルで幼児も保護者も変わりますが,『もったいない』だけでなく,この講演会でいいものを使って修理して長く思い出を託する。安くていいものと将来の価値を考えて使うことが大切と講演でお聞きし子どもを育てるうえで,お金や物をかける判断が理解していただけたのではないかと思った。
 
 おわりに
  2年前まで人権教育研究園として,研究を積み重ねたうえに金銭教育を進めてきた。豊かな体験活動を通して,保護者や地域の方々に協力をして戴きながら保育を進めてきた。
 園で収穫した野菜を売り,その収益金で誕生会や遠足のおやつを買ったり,100円で買える物等幼児同士で相談をしたり,店でお金を使い物を買う体験をしたり,お金=物のしくみを感じ取っている。
 しかし,保護者は,「家で子どもにお金を持たせることはまだ早い」,「お金の大切さが分からないから与えない」という考えの方が多かった。金銭教育の活動を進めていく中でお金の使い方などについて話し合っている家庭が多くなってきた。
 幼児の生活の中で,「節約」「我慢」「もったいない」で,大人が一方的に押し付けるのではなく,汗を流したり,待ったり,目的を達成する体験をすることで,教師も幼児と共に感動し,勤労やお金の大切さに気づき,保護者にもその感動を丁寧に伝えていくことが園に求められている。
 また,私たち教師も保育の忙しさのあまり,教材などを粗末に扱ってしまうこともあった。ただ『もったいない』というだけ,使い終わった教材を倉庫にしまって置くだけでなく,次への保育教材のステップとして,再利用するようになった。
 核家族化の中で幼児たちは,確かに体験不足である。毎年保護者は,「家庭で出来ない体験を幼稚園でさせて欲しい」という要望が多い。
 金銭教育を進めていく中で,今年度初めて試みた災害キャンプ,高台探しなどは人と助け合う大切さを保護者は考えさせられたり,心にしみたり感動的な出会いの活動であった。少しでも東日本の人たちの心に寄り添えた気がします。
 
   
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