●平成23年度徳島県立鴨島商業高等学校活動内容(抜粋)
 
研究主題・研究目的・研究の実施学科については、平成22年度活動実績を御覧下さい。
 
 T はじめに
 本校は、創立54年目の商業高等学校であり、商業科(各学年2クラス)・経営情報科(各学年1クラス)でそれぞれ専門性を活かした学習をしています。来年度からは、阿波農業高等学校との再編統合により、今まで培ってきた商業教育・農業教育をよりいっそう充実させ、会計ビジネス科・情報ビジネス科・食ビジネス科・農業科学科・生物活用科を設置した吉野川高等学校として生まれ変わります。
   
 U 研究の概要
  研究活動計画書
             研 究 テ ー マ  ・ 内 容     実施時期
 ・金融や経済のしくみについて考える
  利率(単利と複利)について
  代金決済について

 ・地元産品を使った商品開発を考える
  商品開発コストについて
  マーケティングについて
  広告について

 ・ネットショップについて
  ネットの利便性について
   購入者側より(振り込み等について)
   販売者側より(店舗費等の経費削減について)

 ・ローン・クレジットについて

 ・消費者の権利と自己責任

 ・各年度の反省
 4月〜7月



 9月〜12月




 6月〜12月




 11月

 1月



 
 V 研究内容
(1) 金融や経済のしくみについて考える
新聞記事の活用




金融危機を深刻化させた2008年9月の米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻を例に、生徒自身が経済についてどの程度の知識を持っているかを確認しました。その結果、ほとんどの生徒が経済の知識が不足していることが明らかになりました。今後、新聞や経済誌などを読んで経済の動向をつかむ能力を身に付ける必要性を痛感しました。
Webページの活用


 
金融についてどの程度知っているか「知るぽると」(http://www.shiruporuto.jp/)のクイズを用いて確認させました。比較的簡単な問題から生徒は興味を持って挑戦し、金融に関してある程度の知識があるという結果が得られました。

(2) ローン・クレジットについて

  新聞記事の活用

 
私たちにとって身近なお金のトラブル(振り込め詐欺や未公開株の購入による損失など)を生徒に紹介しました。
 


 
全国の消費生活センターへ寄せられる苦情から、クレジットカードを悪用した新しい手口の具体例として、「多重債務者に至らせるケース」や「ヤミ金融などで借り入れたものの生活資金や借金の返済のためのクレジットカード現金化利用」などを取り上げました。
 

 
利息返済のための自転車操業の借り入れは改正貸金業法によって全面禁止になるなど、消費者を守る法律が制定されたことを取り上げました。
 

 
お金のトラブルに巻き込まれた場合には、一人で悩むのではなくて相談窓口として徳島県消費者情報センターや国民生活センターがあることを周知しました。

(3) 消費者の権利と自己責任

○私たちの身近に起きているトラブルについて学ぶ
  新聞記事の活用


 
私たちの身近に起きている振り込め詐欺や未公開株の購入による損失などお金に関わるトラブルが最近後を絶たないことを「お金のトラブルご用心!(徳島新聞10月2日(日)」を用いて紹介し、生徒の身の回りにもそのようなトラブルが起きていないか点検させました。
 
過去の追跡調査では相当数あったものが現在では減少していることを強調しました。

○いろいろな機関の紹介をして対処の仕方を学ぶ
  新聞記事の活用


 

相談窓口についての学習時に、トラブルの種類には複雑で多岐にわたるものが多いことを説明しました。その中で、私が昨年勤務していた徳島県消費者情報センターを紹介し、一人で悩まずに相談することの重要性を強調しました。そのほか、国民生活センターや平成22年12月にできた消費者庁について紹介しました。

○いろいろなトラブルの解決法
  新聞記事の活用



毎日、いろいろなトラブルの事例が報道されています。生徒が将来、トラブルに遭遇した場面を想像させ、トラブルの解決法を知っていれば、自分だけでなく回りの困った人にアドバイスができるということで、解決するためには、どのような行動が必要か学習させました。
 
  Webページの活用

 
 
徳島県金融広報委員会が主催する「くらしのセミナー」が開催されていることやインターネットでもトラブルなどの情報の公開をしているので、Webページで検索してより関心を高める必要性を認識させました。
 

 

生徒の感想の中で、早期に金融トラブル解決を目指すADR制度の知識を持った生徒や、困ったときには弁護士に相談をすることがリーフレットに載っていることを知っている生徒もいました。まとめとして、授業で正しい知識を学ぶ必要性を理解させました。

(4) ネットショップ
  Webページの活用



本校のネットショップ(YoshinogAWA E-MARKET)は、平成21年9月10日に営業を開始しました。取り扱い商品は、地元企業「野田ハニー食品工業乾の「はちみつ」関連商品と「阿波農業高等学校」の藍染め品です。
 


売上げが伸び悩む原因を探る中で、ネットショップは、顧客のアクセス数を増やすために、商品に関するわかりやすい説明や見やすいデザインが重要であることがわかりました。
 


商品の撮影やカラーコーディネートなども、専門家に指導していただきました。また、販売促進の取り組みとして粗品の進呈なども有効な手法であることを理解しました。
 


ネットショップとオークションの違いや代金の支払方法・購入時の注意やいろいろな決まりや法律なども理解することの重要性を痛感することができました。
 

学習を深めるなかで、「お客様のニーズをつかむ」ことが一番大事なことであると理解しました。

(5) 地元産品を使った商品開発

  「第3回全国商い甲子園(平成22年8月実施)」で、商品開発・販売にチャレンジしました。
 

 
 
最初は、地元産の農産物を使って「何か商品化できないか」と生徒と安易な気持ちで取り組みました。しかし、何から始めたら良いのか分からず地元の方とのネットワークづくりに取り組みました。
 


 
知り合った方々に指導していただき、吉野川産の「にんにく」や「おからペースト」を使って開発してはどうかと、アドバイスを頂きました。「おからドレッシング」を製造している企業にお願いし、第1弾として「おからドレッシングすだちにんにく」の開発を手がけました。
 

 

今回、この研究指定がなければここまでの商品開発・販売実習等もできなかったかと考えます。また、商品開発をすることによって、原価計算の必要性を知り、販売するとき商品説明の大切さを学習しました。



消費者として、この商品は、「いくらぐらいで製造できるのだろうか」ということや食品表示を気にすることが多くなってきたという意見も聞かれました。食品を製造・販売したことにより、食品表示の消費期限と賞味期限に興味を持ちその違いを理解することもできました。


実際に商品ができると次に起業に興味を持つ生徒も出てきたので飲食店やネットショップの始め方と運営の仕方について学習しました。
 
 W 2年間の取り組み
 
1 ネットショップについて
(1) 目的
 ネットショップについて学習し、どこからでも商品の購入ができる利便性もあるが色々なトラブルもあることを理解させ、購入者側・販売者側それぞれの立場から学習させる。
 
(2) 実施内容

 対象学年      3 年    2 年
 対象学科  経営情報科  経営情報科
 科   目  総合実践(選択者)  ビジネス情報
 実施時期  5月中旬〜12月上旬  1月下旬〜

 ネットの利便性について学習し、本校が21年度より運営・管理しているネットショップYoshinogAWA E−MARKETを題材として購入者の立場・販売者の立場からネットショップについて学習していく。

  購入者側の学習
 ネットショッピング・ネットオークションは、相手が見えず、商品は写真や文書による説明で知るしか方法がなく、写真と同じものが送られてくるか、写真と同じ色かなどの不安が残ることが多い。
 代金の支払方法には、銀行振込・代引き・クレジット払いなどがあるが、特に銀行振込の場合は商品が送られてこないといったトラブルが発生するおそれもある。
 それに対して代金引換は手数料はかかるが実際に商品が手元に届いてから代金を支払うので安心である。しかし、現在ではアマゾンやヤフーショップなど安全なネットショップもあることを理解させた。

  販売者側の学習
 ネットショップは店舗を持たず、必要なものはインターネット環境および販売する商品だけであり、人件費も少なくて済む。
 代金の受取方法として、クレジット払いを導入する場合には、登録などの手続きが必要であり学校で行うことは難しい。
 購入者が実際に商品を手に取って見ることができないため、商品の特徴などを的確に伝える事が重要となり、商品に対する顧客の満足度を高めることでリピーターを増やすことも大切である。
 また、購入時や購入後のお得感を与えることも大切である。そのための手段として販売促進活動等が重要であり、一例として購入したお客様に生徒がデザインしたマウスパットを粗品として進呈した。
 実際に、ネットショップを運営することにより生徒にネット販売に対する興味・関心が生まれてきた。

(3) 考察と反省点
 22年度から23年度にかけて、Webページのデザインを、消費者が見やすく購入しやすいページに変えてみてはとの生徒の意見から変更を行った。また、22年度に販売促進用マウスパットを作成したことで販売促進につなげることができ、23年度も引き続き販売促進成果をあげることができた。ネットショップを展開するためには、サーバーを必要とするがほとんどのネットショップでは、業者と契約しサーバーを借りることが多い。現在本校でも、業者と契約している。将来的には、自前で運用出来ればと考えている。
 
 
2 地元産品を使った商品開発を考える
(1) 目的
 地域と連携して、地元のものを利用した商品のアイデアを考え、商品化するとともに販売価格を設定して販売を行う。
 
(2) 実践内容
 
 対象学年  2年
 対象学科  商業科
 科   目  起業実践(選択者)
 実施時期  6月上旬〜2月下旬
  

 地元の産品を用いて、地域に根ざした商品開発についての考察を行った。まず、生徒にとって身近な、地域で生産される農作物の利用を考えて商品開発を展開していった。
 全国商業高等学校協会のWebページに紹介されている他校の商品開発を参考にして、自分たちが製作可能なことを考えてみた。次に商品(製品)をつくるための材料費などを算出して、販売価格を課した。
 広告については、商品紹介などに工夫を凝らすとともに、見た目が美味しく感じられるようデザインを工夫し、販売については、吉野川市にある農産直売所の協力を得て委託販売を行っている。
 生徒は、商品化されるまでのプロセスの大変さを学習できたと考えている。
 22年度には、すだちにんにく・阿波農業のおいしいトマト・ピリ辛のおからドレッシング3種類を開発し、23年度には、おからde美人シリーズ(おから羊羹・おからマドレーヌ)・不知火ハンドクリーム・和三盆アイスシリーズ・ジンジャーミルクアイスを開発した。
 
(3) 考察と反省点
 学校開発商品は、基本的に買い取りであるため、在庫を抱えることは難しく、発注商品数を少なくすれば材料費以外のコストもかかる。23年度の開発商品についてはそのことを踏まえ、企業とのコラボ商品として開発したものもある。
 マーケティングについても、ターゲットを絞り込んだり、メディアに取り上げてもらうなどの活動が重要である。メディアに取り上げられた後の商品については、販売数量についても大幅に増加した。
   
 
3 商品販売
(1) 目的
 販売実習をとおして、商品販売の難しさや消費者心理について学ぶとともに勤労観・職業観を養いながら、生きる力を身につける

(2)実践内容
 対象 情報処理部
 22年度       イベント名       販売場所    実施日
 第3回商い甲子園 安芸市商店街(高知県)    8月7日
 ビジネスチャレンジメッセ アスティ徳島   10月15・16日
 わくわく日曜市 紺屋町通り   12月26日

 23年度       イベント名       販売場所    実施日
 近郷高校春の文化祭 鴨島公民館   4月24日
 第4回商い甲子園 安芸市商店街(高知県)   8月 6日
 阿波市・吉野川市観光PR ゼスト御池(京都府)  10月 1日
 吉野川コレクション 鴨島公民館  10月 9日
 かもじまエコイベント JR鴨島駅前  10月16日
 新町川ボードウォーク 東新町商店街  11月 5日
 菊まつり 吉野川市役所  11月 6日
 阿波市・吉野川市観光PR JR岡山駅(岡山県)  11月12日

 他に地元企業である野田ハニー食品工業鰍フ「はちみつまつり」(8月)、「みつばちまつり」(3月)に参加した。

 学校開発商品については、22年度に3回販売実習を行った。商い甲子園では、試食品を提供することにより好評のうちに完売することができ、ビジネスチャレンジメッセでは、前日に購入したお客様が翌日に3本の購入をしていただき、生徒は商品に自信を持つことが出来た。わくわく日曜市では、デザイナーの指導により作成した商品ラベルを用いて販売を行った。
 
(3) 考察と反省点
 すべての販売実習で成果を上げることは出来たと考えるが、交通費等を考えると対費用効果に疑問は残る。
 23年度の販売実習生徒は、希望者等を募り各学年から生徒に体験させることができた。
 
 X 2年間の反省
 22年度は、金融教育の初年度として、各方面から御指導をいただき、試行錯誤しながらもできることから始めることとした。22・23年度商業科の授業担当者が協力し合いながら意見を出し合い、具体的な取組等について何度も検討を行った。
 授業もなるべく金融の要素を取り入れるよう工夫をし、ものを大切にする心やもったいないと思う心を育て、お金のありがたみを知ることによって、保護者をはじめとするまわりの人々に感謝することのできる生徒を育てることができた。知識としてしっかりと定着させるとともに、生徒の心を育てる授業を心がけた。
 また、地域の協力もあり多種多様な商品開発に取り組み、販売することも出来て大変ありがたく感じた。今後も、地域と連携して開発商品を行っていきたいと考えている
 厚生環境課では、毎月の電気・水道費などのグラフ化をすることによりエコ教育も行った。震災関連で、消費電力予想などもメディアで取り上げられているので、今後はもっと生徒にエコ意識を浸透出来るように取り組みたい。
   
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