●平成21年度堀江北小学校活動内容(抜粋)
●金銭教育全体計画 
金銭教育のねらい、研究主題については20年度実績をご覧下さい。 
 
主な学習内容・活動について
〜これまでの金銭教育の実践経緯や課題をふまえて〜
 本校では一昨年度まで、実際に金銭を授受する体験的な学習として、第6学年のバザー開催と第5学年の自作陶器販売体験の2つを実施してきた。この売り上げ金は学習用品や工作材等の購入に充てられ、6年生5年生とも学校のリーダー的存在として自分たちが学校生活の充実に貢献できる喜びを味わうことができた。しかし、商品の価格相場を調べたり陳列や広告PRなどのノウハウをきちんと事前学習したりしたわけではなく、売り上げの目標額も明確に設定したわけでもなかった。
 指定事業初年度の昨年は、よい商品の提供、適正な値づけ、1円を大切にする金銭管理という面、また勤労体験やコミュニケーションの充実という観点でより重点的に学習単元を改善し、正しい金銭感覚と「もの」や「人」を大切にする態度を身につけさせたいと考え、取り組んできた。
 昨年度の「成果と課題」をふまえ、本年度は、第5学年総合的な学習の時間「すばらしき焼き物の里・大谷」での自作陶器の販売体験を中心とした一連の陶芸体験活動を中核に、各学年また全校的な活動の実践研究を行う。
●活動の実際
 第5学年の取り組み 「すばらしき焼き物の里・大谷」

 
陶芸作品づくり

◆窯まつりへ向けて事前準備

 子どもたちが楽しみにしている窯まつりの開催は、11月第2土・日。販売体験のための出店準備を始めた。
@)窯元見学
 品揃えや値段の相場、陳列の工夫などを学ぶために、窯元さんを訪問した。見とれるほど見事な作品には相応の値段がついており、5年生の商品とは比較が難しいと児童は口にした。それでも児童は、用途や大きさを考慮したディスプレイのしかた、商品名を書いた値札など、参考になる点をいろいろと学んで持ち帰ることができた。
A)販売用作品の手入れと販売時間帯別の仕分け作業
 保護者に確認をとり、A班(初日の午前)、B班(初日の午後)、C班(2日目の午前)と3つの班編制を行う。この作業で実用性のある作品と残念ながら使えそうにない商品に分けた。
B)値つけ作業
 この作業により、児童の心の中で出店が現実味を帯びたのかもしれない。
 担任からは「自分がお客さんならいくらで買うか、と考えてみよう」と声をかけた。また、粘土や燃焼用のガス、釉薬などの原価を伝え、およそどれぐらいの売り上げを見込みたいかも示しておいた。全体的に控えめな値段をつけていた児童だったが、一人が「少し高いぐらいにつけておいて、お客さんと相談して値引きしてあげよう」と提案した。そこで値段の修正が始まり、計算上の総売り上げ見込み額は原価を上回った。
C)吊り看板の制作
 看板はお店の顔。興味をひく魅力的な看板を作ろうと呼びかけると、数名の児童がぜひ担当したいと申し出た。全員で今回開くお店の名前をまず相談する。20数個の候補から「堀北の宝物」と決定。
D)チラシづくり
 児童たちは生活経験上、集客における広告の価値をよく知っており、担任から提案しなくとも自然とチラシを作ろうと声が上がった。一人ひとりの紙面づくりのアイデアを生かしたいと思い、全員にA4版1枚の広告を作成させてみた。事前に打ち合わせしておいたサービスの内容、開催日時・場所だけは共通で表示することを指示し、自由に作らせた。広告担当のメンバーで各学級や職員など配布先を決定し、開催日に会場で配る分も計算して印刷した。
E)その他の売り上げアップ作戦
 前年度の売り上げを上回りたいと意気込む5年生児童。窯元見学やこれまでの窯まつり参加の経験から、いくつかのアイデアが新たに出された。
 まず、陳列台への表示づくり。自分たちで入手してきた廃木材を加工し、商品の説明をカラフルに描き加えて視覚的にアピールする作戦を考えた。
 次に、小物づくり。“購入してくれた”お客さんにプレゼント、さらに“もれなく”プレゼントするもの、“くじ引きで”プレゼントするものの2種を制作、来店した人を楽しませたいという意識をもって取り組むことができていた。


◆大谷焼窯まつりでの販売体験
 準備も整い、いよいよ窯まつり開催当日を迎える。3交替制でシフトを組んだ5年生たちが、作品販売に臨む。陳列、呼び込み、接客、販売、商品の梱包、役割は多かったが、児童は意欲的に働いた。
 店の混雑具合に応じて児童は柔軟に役割交代をし始め、営業活動にも出かけるなど、活発に行動した。仕事を終えた児童は、とても晴れやかな表情をしていた。

◆大谷焼関連学習 本年度の改善点
1.消費者の視点を強調したこと
 窯まつりの販売体験に向けた作品づくりにあたり、使う立場に立って実用性をしっかり意識できるようにした。家族構成や使う場面をいろいろと想定し、たとえば「小皿は1枚だけよりも5枚揃いで用意した方が買ってもらえるのでは?」というように考えさせながら制作にあたらせた。またE)で述べたように集客を意識してサービスの工夫を多様に考えさせ、学校菜園で栽培したサツマイモをプレゼントするなど、他の活動と関連させた企画も実施した。
2.保護者との連携を強めたこと
 本年度は、学級だよりや窯まつりに関する案内などで活動の趣旨を家庭に紹介する機会を増やしたこともあり、いろいろな面で保護者のサポートを得られた。
3.コミュニケーションの充実を図ったこと
 研究主題にも掲げた、人や地域を愛する心情を育成するために、コミュニケーションの機会を増やし、質も高めたいと考えた。
 具体的には、まずチラシの配布先を各学級・家庭と職員から幼稚園やご近所まで広げ、5年生児童自身が訪問しPRするようにした。また児童が量販店やコンビニエンスストア、個人商店に児童が、作成したチラシの掲示をお願いに行った。いつもの他愛ないおしゃべりとは雰囲気のちがうやりとりに児童は緊張したようすであったが、マナーよく正しい言葉遣いで地域の人と交流するよい経験になったと感じている。
 出店では、販売する商品の一部に値段をつけず陳列させた。これらはお客さんとの交渉で販売価格を決定する一つの試みである。店員である児童とお客さんの間で「これをいくらで買っていただけますか?」「そうやなあ・・・○○円ぐらいは?」と会話が増え、児童の対話能力の向上に効果があったと考えている。
4.事後指導の深化を図ったこと
 地域への所属感や主体性、勤労意欲、金銭感覚をいっそう高められるよう、事後指導を充実させたいと考えた。
 ここでも発信する力を育成したいと意図し、いくつかの活動を展開している。
 まず毎年交流を続けている隣接校との交流学習で、今回の大谷焼関連学習の成果を紹介したこと。
 次に、他教科の学習と関連づけて活動したこと。国語科「方言と共通語」「ニュース番組づくり」社会科「わたしたちのくらしと情報」の学習はタイムリーで、大谷焼窯まつりが開かれた東林院をはじめとする地域の寺社や名所・遺跡などを紹介するニュースを制作した。
 そして、ホームページづくりにこれからチャレンジする予定である。本校ホームページ「各学年の活動紹介」は職員が作成してきたが、体験した児童自身の生きた感想や情報を届けていきたいと思っている。伝える値うちのあること、ぜひ伝えたいことを、文章表現的にも視覚的にもよりよい情報となるよう、しっかり指導して作成させたい。  

研究の成果と今後の課題
  【研究主題に照らして】
○人を大切にする心情は育ったか?
 各学年とも、人との関わりを重視し、コミュニケーション能力の向上を担任が強く意識して実践に努めた結果、異学年交流や地域の人、他校の人との交流が活性化し、前年度より質の高い活動が展開できたように思われる。
○ものやお金を大切にする心情は育ったか?
 金銭の授受を伴う販売体験などの活動に加え、学校版環境ISOに係る活動や栽培活動などの充実を図ったため、意識は高まったと思う。プール清掃で活用したEM培養液を家庭に持ち帰り自宅の菜園で使っている児童、無駄遣いに気づきこづかい帳をつけるようになった児童など、一人ひとりに何らかの変容が認められている。
○地域を大切にする心情は育ったか?
 各学年の活動内容により地域との関わり方はちがうが、活動を通していままで着目してこなかった地域のよさを児童が認識できた、というのが各担任共通の感想である。あたりまえに住んでいた校区には誇れるところがたくさんあることを知り、交流学習や学習発表会などの場でみんなに知らせたいと意欲をもち、発表原稿づくりに意欲的に取り組む児童の姿が見られたことは、とてもうれしい成果であった。
○勤労意欲は高まったか?
 窯まつりの販売体験、バザーの運営、キッズファンタジーの開催などを通し、自分たちの働きが学校生活の向上に寄与することを児童は実感できた。各学年が活動後に書いた感想文には、働いた満足感、人の役に立った喜びがたくさん書き綴られている。

●おわりに
 大谷焼陶業協会会長(当時)のMさん曰く「大谷焼が発展したのは、ここに土と薪と人があったから」。作品の元を形作るための土、それを完成品に焼成してくれる薪、さらにそれを評価し買い求めてくれる人。大谷焼の職人さんたちは200余年もの永い時間、それらを尊重して伝統工芸を守り抜き、焼き物の里として大谷の名を高めてきた。この窯元さんたちの生きる姿こそ、本主題「人・もの・地域を愛し、進んで行動する子どもの育成」という私たち職員がめざしているものとぴったり符合しているのではないだろうか。
 今回の研究に係るさまざまな体験的活動の実施にあたり、大谷焼陶業協会、商工会、婦人会、JA徳島北、阿波銀行等の諸団体、また地域の人から、心温まるご支援を賜った。その多大なるご厚情に特段の謝意を捧げるとともに、今後の実践へ全力を尽くすことをお約束して、結びのことばとしたい。
   
 
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