●平成20年度堀江北小学校活動内容(抜粋)
 
1.本校の金銭教育全体計画 
(1)金銭教育のねらい
 金銭教育に係る体験的な活動を通して、お金・物を大切にする心情や正しい職業観を養い、経済社会の中に身を置く一員としての行動力を高めるための効果的な指導法を探求する。

(2)研究主題
 人・もの・地域を愛し、進んで行動する子どもの育成
   〜勤労意欲と金銭感覚を高める体験的活動の創造〜

(3)主な学習内容・活動について
 第5学年総合的な学習「すばらしき焼き物の里・大谷」での自作陶器の販売体験、また第6学年総合的な学習「伝えよう・ありがとうの気もち」でのバザー開催の2つの学習活動を中核に、実践研究を行う。この2つの学習活動には他学年の児童も参加するため、消費者側、生産者側双方の視点から正しい金銭感覚の育成に資することが期待される。
 第1〜4学年では、発達段階に応じ、社会科、生活科、算数科、道徳等の時間において、金銭の価値やその取り扱い、さまざまな職業と従事する人々などを題材とした学習を展開し、総合的に指導する予定である。
 
2.活動の実際(第5・6学年の取り組み 紹介)
(1)第5学年の取り組み「すばらしき焼き物の里・大谷」を通して
◆陶芸作品づくり
@)土練り
 この土練り作業が陶器のできばえを左右するとあって、児童は真剣な表情で作業していた。個人制作用の土と窯まつり販売作品製作用の土を合わせて○○kg…と準備する土の分量を計算させて、今後の活動全体に見通しを持たせた。
A)成形
 今回、窯祭り販売用の小物づくりは特に、できばえにこだわった。消費者の視点で、本当にほしいものはどのようなものか、買っていただけるためにはどのように作るべきか、ということを児童にしっかり考えさせた。
B)素焼き
C)色つけ
D)本焼き
 本焼きの到達温度は約1200℃、作業の困難さは素焼きの比ではない。この温度になると児童に作業させることはできず、5年生は温度の記録と薪運びのみ。他学年も入れ替わりに見学に来て、焼き物が仕上がるたいへんさを感じ取ったことと思う。
E)窯出し(完成)

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◆大谷焼窯祭りでの販売体験

         ≪ 販 売 体 験 の た め の 具 体 的 な 出 店 準 備 ≫
  A.窯元見学…商品の値段、陳列等のリサーチ
B.販売用作品の手入れと販売時間帯別の仕分け作業
C.値つけ作業
D.テントに備えつける吊り看板、立て看板の制作
E.研究内容をまとめたパネルの制作
F.来客に配布するチラシづくり

 さて、準備も整い、3交替制でシフトを組んだ5年生たちが、いよいよ窯祭りでの作品販売に臨む。陳列、呼び込み、販売、商品の梱包、あいさつ…役割は数あれど、初めはどれもぎこちなかった。それでも、激励に訪れた保護者の方や毎年窯祭りに来ているという陶器ファンの方などが何点か購入してくれたのをきっかけに、児童は平常心を取り戻し、学習してきたことが実践できるようになっていった。主体的に役割分担を始めた児童は、営業活動(?)にも出かけるなど、活発に行動し、約400点の小物は2日をかけて見事完売した。
 実際に金銭を受け取ることは、児童にとって重大なことであったようだ。間違えないように、慎重に計算しおつりを手渡していた。売り上げノートを何度も確認してささやき合うように喜びをかみしめていた姿が、とても印象的であった。

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2)第6学年の取り組み「伝えよう・ありがとうの気もち」を中心に
 
★ バザーを開こう
 不要品を相互活用する、また売り上げを学校生活に役立てるという趣旨で、バザーの開催を計画した。
             ≪ バ ザ ー の た め の 具 体 的 な 事 前 準 備 ≫
  ・各学年の保護者、各地域の方々へ担当児童より品物の提供を依頼
・品物の受け取り、保管
・品物の分類、手入れ、値つけ
・会場準備…表示づくり、陳列、飾りつけ
・広告作成、配付

 事前準備で力を注いだのは、適正な値つけ作業である。リサイクルショップでリサーチしてきた児童やインターネットで相場を調べた児童もいて、真剣な姿勢が窺えた。
 バザー当日は、6年生児童28名で役割分担をし、案内、接客、商品の説明、レジでの金銭の授受、商品の受け渡しなどを行った。150人ほどの来客で盛況のうちに終えることができ、児童は満足そうな顔で後片付けをしていた。
 売り上げ金の使い道を考えた事後学習では、図書を増やそう、学校で飼育する動物を買おう、学校の修理費用にしようなど、さまざまなアイデアが出された。職員とも相談した結果、全校児童で楽しめるよう竹馬と一輪車を購入した。

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★ A銀行 出張授業
【第1回:お金はどこから来て、どこへ行くの?】
 金銭学習の第1回目、阿波銀行の職員さんが講師としていらっしゃった。
Q.あなたにとって、お金とは何?
Q.ほしいものが買えないとき、あなたはどうする?
など、改めて考えたことのない問いかけに、児童は少し答えに困っているようすであった。
 お金は仕事をする時間的犠牲の対価であること、生活に必要なお金のめやす、そして賃金の高さや職種と人間的価値は別のものであること、お金は生活を豊かにする大切なものであるがお金があることが幸福なのではないということを、教わった。
【第2回:ほしいモノはキリがない】
 前回とは別の講師さんがいらっしゃってご指導いただいた。
 今ほしい物を思うまま書き出し、その中から本当に必要な物は何かと考えながら優先順位をつけた。文具やお菓子、ゲームから家、車などまでいろいろな物が書かれていた。
 また、こづかい帳のつけ方を練習するのに、サイコロを使って「ディズニーランドのチケット代を貯めよう」ゲームをした。定期的に出費がある実生活の中で計画的に貯金する難しさと大切さを学んだことと思う。
【第3回:予算は限られている】
 金銭学習の最終回は買い物シミュレーション。1500円の予算でカレーライスとサラダの材料を購入する。
 「Rスーパー」には食材がいっぱい?あって、組み合わせ自由。チキンカレーもよし、シーフードカレーもよし…。はじめはあれもこれもほしがって少々予算オーバー。それでも最終的にどのチームもうまく予算内でよい食材を買うことができた。
 ほしい物イコール買う物ではない。財布の中身と相談しながら買い物をしたり、どうしても高価な物が必要なら計画的に貯金したり、と上手にお金を役立てていかなければならないということを、児童は理解することができた。

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 ★ 租税教室

 事前に社会科の学習で、児童に税金でどんなものを知っているか尋ねると、「消費税」と「所得税」の答えが返ってきた。この2つは、児童自身や家族にとって一番関わりの深い税金であるから、みんなよく知っていた。担任からは他に、「住民税」「家や土地に関わる税金」「自動車に関わる税金」などを紹介した。
 税金の使いみちについては、学校の施設などの整備・管理に使う「教育費」以外はあまり知らないようだった。「住民のためになる“公共”のことに使われるよ」とヒントを与えると、「道路や信号」「橋や堤防」「公園」「老人施設」「市民病院」などの答えが挙がった。「年金給付」や「ゴミ処理」などにも税金が必要であることを紹介した。
 歴史で学習した江戸時代の年貢、明治時代の地租などの印象があるせいか、税金は取られてつらいものというイメージを多少抱いていたよう。公共の福祉つまり住民が幸せに暮らせる取り組みに欠かせない税金のねうちを、しっかり伝えたいと思い、税務署の人を迎えて租税教室を開く。
 職員さん曰く「税金はみんなの社会をよりよくしていくための“会費”だと考えて欲しい」。この時間に学んだことをしっかり受けとめ、将来納税義務を正しく果たす社会人になってほしいものである。

 
3.活動の成果と来年度への課題
 学年ごとの視点で体験活動を実施し、全体目標に掲げた、お金・物を大切にする心情や正しい職業間を養うことは、一定の成果が上がったと感じている。落とし物が減った、異学年間の交流が盛んになった、奉仕活動に取り組む高学年児童が増えたなど、さまざまな側面で金銭教育で取り組んだ効果が生きていると認められる。
 学年の活動内容、発達段階に応じて目標を立てて実践してきたが、体験的な活動や講師を招いた出張授業に終始し、学年間の系統性が薄い取り組みに終わった感がある。また、学年によっては時期的な偏りがあったこと、事後学習としての実践化が不十分だったことも反省点として挙げられる。
 成果の上がった側面をより発展的に構築することはもちろん、これらの反省点を見直し、より系統的な金銭教育年間計画の作成、お金、物、人、地域と関わる活動の展開方法などについて改善していきたいと思う。

 
   
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