●平成20年度大野幼稚園活動内容(抜粋)
 研究主題及び金銭教育でめざす子どもの姿と目標等については、19年度活動内容を御覧下さい。
 
 研究の実際
【実践1】−地域社会の中で−
★事例1 鉄道なんでも学び隊「汽車にのっていこう」
 JR四国から、鉄道の体験学習を通して、列車に乗車する際の正しいルール・マナーや公共交通機関の果たす役割等を学ぶ。
○内容
 ・ 駅での仕事内容、公共交通機関の役割
 ・ 切符の購入体験、正しく目的地までの切符の購入
 ・ 乗車及び車内でのマナー及び鉄道を利用した旅の楽しさ
○計画
 ・ 阿南駅から徳島駅まで切符を買う
 ・ 南小松島駅で降りて、スーパーマーケットで一人150円ずつお金を持って、おやつを買う。

<ねらい>
 ・ 本物のお金を使うことで、お金とものの関係を知る。
 ・ ものには値段があり、お金の数とその値段の関係を知る。
 ・ お金の仕組みを学ぶ。
 ・ 買い物経験の豊富な年長児が率先して、年少児に教えてあげる経験をする。
★事例2 スーパーマーケットでの買い物体験
<ねらい>
 ・ 計画的(一人150円)な買い方ができる。
 ・ 共通の条件の中で、買い物体験を含めた金銭教育をすることができる。
 ・ 友達、教師、店の人との関わりの中で、お金の使い方を学ぶことができる。
<準備>
(1)事前調査
 利用するスーパーマーケットに行き、許可を得た上で、子どもの人数、どのような商品があるか、店の雰囲気は、店の周りの危険なところは(交通量)など、具体的に把握し、計画する。
(2)計画の立案
 どんな商品をどのように買うか具体的に考える。(どんな品物を いくらぐらいでだれに どんな気持ちで)
(3)計画に基づいた買い物体験

【反省・考察】
・ 子どもたちを同じ条件(金額・場面・時間)のもとにおいて、買い物体験の取り組みをすることが
 大切である。そこで、おやつを買うという機会を利用して取り組んだ。子どもたちは保護者から
 買い物の知識を生活の中で教わっているので、事前に話し合うことで、もっと知識を広げること
 ができた。
・ おやつは自分のために買う子もいたが、弟や妹や家族のために感謝の思いを込めて買った子
 もいた。人との関わりを意識しながら、お金を有効に使う方法や大切さも4歳・5歳なりに学べた。
・ 年長児が自分の体験からリーダーシップを取る場面を認め、見守るようにした。わからないこと
 は教師に助けを求めたり、10円や30円の少額の品物を数多く手にした子は、“これ いけるん?”
 と、確認したりすることで、安心してその子なりの計画をたてて買い物体験をすることができた。
・ 本物のお金の大切さを感じることができたし、ものやお金の流通の仕組みについて、4歳・5歳
 なりに少しは理解することができた。
【実践2】−リサイクル運動を取り入れて−
★事例 もってこ缶かん
<ねらい>
 ・ ものを大切にする気持ちをあそびや生活の中で育てる。
 ・ 自分たちにもできる資源の再利用や生活に還元できるリサイクルがあることに気づかせる。
 ・ 段取りよく生活できる方法がいろいろあることに気づき、自分で考えて行動できるようにする。

<取り組みと考察>
(1)計画
 
 ・ 子どもたちにいろいろな意義ある体験をさせたい。
 ・ その体験の中には必要な経費がいることもある。
 ・ 毎月の園会計は決まっていて、余分な経費などない。
 ・ 保護者には、なるべく集金という方法をとりたくない。
 ・ ものやお金に不自由を感じる生活体験が少ない現状の中で、ものを大切にしたりリサイクルしたりする生活を知らせたい。
 ・ 園児や保護者も日に日にの積み重ねで簡単に取り組む方法を考えたい。

(2)環境構成
 ・ 保護者への園便りや登降園時の情報交換の中で詳しくわかりやすく取り組みを伝える。
 ・ 習慣化するために缶かんを入れるカゴを用意し、表示する。
 ・ 園児が意識しやすいように、また、持ってきた缶かんを入れやすいように、いつも通行する場所にカゴを設置する。
 ・ 回収した量をわかりやすくするために、職員が毎日カゴの中身を点検・整理する。

(3)結果
 ・ 1個でも2個でも持ってきてよいことが分かり、園児が買い物袋に入れて持ってくる。
 ・ 缶収集日の2〜3日前になると、軽トラックなどで大量に運んでくれる。
 ・ 町報紙『にんじん』や保護者の頼みもあって、地域の人たちも賛同してくれて、いつの間にか設置場
 所に置いてくれてある。
 ・ 未就学児登園「こっこクラブ」のメンバーも毎週金曜日の登園時には集めた量だけ持ってき
 てくれる。
 など、同じ目的を持って取り組んでいこうと頑張ってくれる、共通の思いが生まれた。

(4)教師の姿
 ・ 毎日の生活の中で、言葉で伝えるだけでなく教師が行動で示すことが、園児とってモデル
 になる。園児は教師の何気ない言動などを見ているので、常に“もったいない”“段取りよく”な
 ど意識した言動を心がけ生活することが大切である。
 ・ 自分たちが節水や節電・ゴミ減らしなどすることで、自然環境が守られるということを、機会
 を捉えて話し合いながらリサイクルの大切さを自覚させていく。

(5)金銭教育につないでいく点
 ・ 得た収益で日々の園児の園生活に還元していることを伝え、園児の頑張りやリサイクルへ
 の意識が高まるように、言葉で伝えていく。
 ・ 園児に還元したことで保護者に伝える喜びの気持ちが、保護者にも関心を持たせ、目標に
 変わっていく。
 ・ 園児が自分たちの生活の中に、リサイクル活動が生かされているという関心や意識を持ち
 続けていけるよう、簡単に取り組みやすいような方法を工夫する。
 ・ 折に触れて、資源には限りがあり無駄なく大切に使うことの大切さを、園児にも理解できる
 範囲で伝え、家庭に帰ってもそのことが生かされていくよう配慮する。
 ・ 働くことの大切さや大変さも、保護者や地域の人の力を借りながら考えさせていきたい。ま
 た、教師自身が資源を守り実践して生活に生かすことが大切である。

<保護者や子どもの声>
“祭りの打ち子に行って、もらって飲んだジュースの缶を他の人にも、これもろていいん、て言いながら、誰やかしのを集めてな。自分で袋に入れて持ってきたんでよ。しゃんとしとう子になったわ。見直したわ。”
“いっぱい集めたらお金に変わるんやって。ほんで楽しみなこと、いっぱいするんじゃって喜んで持ってくるんでよ。”
“これ昨日、お父さんと土手を散歩しよって見つけたんぜ。あき缶もひろったし、土手もきれいになったし、えらい!?”
 
 研究の成果と今後の課題
・ 毎日のようにお金に関する情報が、良きにつけ悪しきにつけ、園児の周りに氾濫している。金
 銭教育に取り組む機会を持てたことで、教師自身も金銭教育がお金の使い方を通して自分で
 選択し、その結果に責任を持つという人間の生き方そのものに関わるという視点で課題を持つ
 ことができた。そして、毎日の園児たち・保護者の様子や教育内容を見直し、反省しながら取り
 組めたことが、大変良い経験となった。園児たちにとっても同様だと思う。
・ “おばあちゃんはお金持ちなんよ。いっぱい欲しいもん、こうてくれるもん”など、子どもは表面
 だけを見て、自分なりに判断する。正しく気づかせ、教えていくことが、働くことの大切さやいろい
 ろな職業の人たちの力で社会や自分たちの生活が成り立っているといことを理解させ、知識と
 なって身についていくことにつながる。
・ 今後も保護者との連携を密にして、ものやお金を大切にする心や態度を育てる家庭環境やか
 かわりを共に見直し、研修を重ねていくことが大事だと思った。
・ もったいない・節約するということが、大事だということばかりメインになっているが、お金を目
的達成のために大切に使ったり、生かして使えることにも当てはまるということも知らせていきたい。
 
 取り組みを終えて
  園児も保護者も教職員もこの2年間取り組んできた。金銭教育をお金=売買する経験と考えていたが、『もったいない』という言葉で全て集約できるのではないか。それが金銭教育ではないかと考えついた。
 『ものを大切にする』その言葉ひとつにしても、自分のものと人のものとの区別を付けるのに名前を書く、最後まで大切に使う、無駄な使い方をしないなど、様々な方向から自分達の生活の中に結びついていくことに気づいた。また、働くことや働いてくれる周りの大人の人たちによって、自分達の生活が潤っているということにも子どもなりに気づいた。
 今後も金銭教育の取り組みが、子どもや保護者や園生活の中に根付き、子どもたちの明るい未来に紡いでいけるよう、私たち職員も更に研修を重ねていきたい。
 子どもたちの生きる力を育てる教育が金銭教育の一つであったということにも十分気づくことのできた2年間であった。
   
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