●平成19年度徳島県小中高金銭教育研究グループ活動内容(抜粋)
 
 研究主題  自立した消費者として家庭生活を営むことができる
                     子どもの育成をめざして
 
1.はじめに
 ここ数年の間に子どもたちを取り巻く環境は大きく変わってきた。子どもたちの普段の生活の中ではインターネットや携帯電話といった通信機器が身近な物となり、目に見えない形でのお金のやりとりは、お金のありがたみを感じる機会を奪いつつある。
 こうした中で、やがて社会に出て行く子どもたちが、自らの生活を支え自立した社会人として生きていくためには、物やお金を大切にする心情や労働への意欲をもち主体的に自己の金銭管理をしていく力を育てていくことが必要であると私たちは考えた。

2.児童の実態
平成19年4月に児童198名(小学校5年生・6年生)を対象に「お買い物工夫アンケート」を実施
【Q.】決まった額のおこづかいをもらっていますか。
 【A.】5年生は約4割、6年生は6〜7割がもらっている。
    金額は500円〜1,000円が最も多く、6年女子では1,000円〜3,000円突出。
【Q.】おこづかいをおもにどのように使っていますか。
 【A.】男子→5・6年生ともにお菓子やゲームソフト等
    女子→5年生文房具、6年外食・マンガ・洋服と多岐にわたる。
【Q.】ほしいものがあるとき、何を手がかりに選んでいるか。
 【A.】「商品を見て」が最も多く、続いて「テレビ広告、新聞・雑誌の広告」が多い。
【Q.】買い物をするとき気をつけていること。
 【A.】「値段はこれでよいか」が最も多く、「本当に必要か考えてから」も多かった。
    6年生男子は品質表示を見て購入する子が最も少なく、必要性・値段について考える子も
    少ない。あまりよく考えたり調べたりせずに買い物をしていることが分かる。
【Q.】お店以外で買い物をしたことがあるか。
 【A.】コミックや雑誌の中での注文が最も多かった。次いでどの学年もインターネットが多く、子ども
    たちの中に広く普及していることが分かる。
こうした買い物経験の豊富さとは裏腹に、お金が家族の労働により得られる貴重な物であるという意識はあまり感じられない。また、家計への関心も薄く、毎日の食材の購入体験や節約、環境への配慮などについての知識も身についているとは言えない。
 
3.研究の実際
(1)年間指導計画の工夫
    5・6年生2年間を見通した家庭科学習の年間指導計画の中で、金銭教育に関連した指導内容を明記した。初めに身の回りの消費生活について見つめる時間をもち、課題解決学習を進めていけるようにした。また、発達段階に応じて金銭教育の知識を深めていくことができるように題材配列を考えた。
(2)学習指導方法の工夫
≪@体験的学習の中で学ぶ金銭教育≫
 他教科や総合的な学習の時間、学校行事の中で体験的学習を組み込み、家庭科学習とリンクさせながら金銭教育を進めていくことにした。
 
●遠足での買い物体験
 6年生の修学旅行でいきなりこづかいを持ち、うまく買い物ができない子どもも多いため、今回、5年生の遠足で1,000円以内のこづかいを持たせる。
 また、事前にどのような買い物をするか計画を立てさせ、計画にそってお金を使うようにさせた。
 自由に使えるお金を手にした子どもたちは、初めての体験に最初はとまどいながらも、様々な工夫をするようになってきた。帰校後「修学旅行の練習になって良かった。」という声も多く、それぞれがお金の使い方を意識することができた。
●買い物体験
 調理実習をするにあたり、自分たちで考えた家族のための味噌汁作りの材料をグループで協力して買いに行くことにした。食材を子どもだけで選び、考え、お金を支払うという体験は、子どもたちにとって大変有意義なものとなった。
●ねぎの栽培・収穫・販売、ねぎを使ったおやつ作りと販売
 <ねぎの栽培・収穫・販売>
 5年生は毎年ねぎの栽培をしている。今年は収穫後、参観日のバザーでねぎの販売を行う予定である。種や肥料にかかるお金と販売した売り上げを比較し、労働の価値を実感させたい。
 <ねぎを使ったおやつ作りと販売>
 学年末には毎年ねぎを使ったおやきやプリッツェルなどのおやつ作りをしている。今年はお菓子と一緒にねぎを販売することにした。労働の意味や流通のしくみ、お金を得ることの大変さについて学ぶことができると考える
≪A外部講師の活用 ≫
 総合的な学習の時間に銀行が実施している「こども金融教室」を実施。銀行員が教師となって様々な教材を駆使して行う授業は、子どもたちの興味を引き、「お金の流れ」、「家計のしくみ」などについて学ぶ良い機会となった。
≪Bコンピュータソフトの導入 ≫
 子ども向けゲームソフトを教室に常時設置しておき、休み時間は自由に操作できるようにしておいた。身近なゲームの中で、「流通」「仕入れ」「利益」「品質表示」など、様々な用語について自然に触れ、お金の流れが分かるようになってきた。また、買い物をする時に気をつけることや工夫したいことについても知識が深まり、後の授業で一人一人の発言にその成果が表れていた。
 
(3)評価・支援の工夫
≪@ワークシート≫
○題材毎に別々のワークシートを作成するのでなく、1年間を通して児童の意識がつながっていく
  ような形式やネーミングの統一性を図った。
○計画→工夫→実施→ふりかえり→再チャレンジの流れが必ず繰り返されるようにした。
○ワークシートには記述部分を多く取り入れ、子ども自身が自分の考えを見つめることができる
  ようにした。
○教師のコメントを書き入れる際に、学んだ事を再確認したり自信をもったりすることができるよう
  に配慮した。
≪A家庭からの学び・支援≫
○家庭ではどのような工夫がなされているのか子どもたちが知るとともに、お互いの家庭の工夫
  を学び合う機会を授業の中や掲示環境の中で設けるようにした。
○家庭での実践の機会を増やし、家族の励ましや賞賛を受け、子どもたちが次の実践に意欲的
  に取り組めるようにした。
 
 <家庭科学習の中で>  第5学年 家庭科学習指導案
題材名 アイディア ショッピング −計画的に買い物しよう−
題材について
 本題材では、「買い物調査隊!」で家族の買い物に同行し、家の人が買い物の際にどのような工夫や節約をしているかについて学んだ。本時では家族のために考えた味噌汁の実を購入するために事前に買い物の計画を立てさせ、実際に買い物をさせることにより、一食分の食事にかかる金額について実感させたい。そして、買い物を工夫することの大切さを学ばせ、将来自立した消費者として生活していくための基礎となる力を育みたいと考える。
題材の目標
○買い物調査から学んだ買い物の仕方の工夫に関心をもち、目的に合った品物の選び方や適
  切な購入の仕方をしようとしている。(関心・意欲・態度)
○買い物の計画・体験を通して、目的に合った品物の選び方や計画的な金銭の使い方を考えた
  り工夫したりしている。(創意工夫)
○目的に合った品物を選んだり購入したりすることができる。(技能)
○生活を支える金銭のしくみや金銭を計画的に使うことの大切さが分かり、適切な買い物の仕方
  について理解している。(知識・理解)
題材構想
 
   
       学習活動       金銭教育との関連
とらえる

見通す



確かめる




生かす
      買い物調査隊!

     <買い物調査隊!1>
 家の人の買い物について行ってみよう
・家の人の買い物の仕方を観察しよう
・家の人にインタビューしてみよう

     <買い物調査隊!2>
 晩御飯のおかずの買い物
・献立とその材料
・一人分のおかずの材料費を計算してみよう

            ↓
   アイディア ショッピング

 家族のためのオリジナルみそ汁
・家族のためになる材料を考えよう
・みそ汁の実の材料の買い物計画を立てよう
            ↓
       材料を買いに行こう
            ↓
・買い物の時にどんな工夫をしたか発表しよう
            ↓
      家族のための食事作り
      材料の買い物をしよう


 商品の選び方、食の安全、資源の有限性
 意思決定、持続可能な社会、予算を立てる
 計画に沿って買う、買い物の工夫


 お金の価値
 家計
 店の選択





 必要性を考えて買い物の計画を立てる



 計画に沿って買い物をする
 予算内で買い物をする
 買い物の工夫



 
指導計画(全4時間)
<第1次> 買い物調査隊!1・・・・・・・・・・・1時間
<第2次> 買い物調査隊!2・・・・・・・・・・・1時間
<第3次> アイディア ショッピング・・・・・・・・・・・2時間(本時2/2)
本時の指導
(1)目標
 生活を支える金銭のしくみや金銭を計画的に使うことの大切さが分かり、適切な買い物の仕方について理解することができる。(知識・理解)
(2)展開
  
     学習活動            指導上の留意点
1 本時のめあてを確認する。


2 班ごとに、自分たちの買い
  物の工夫について発表する。


3 感想を述べ合う。

4 本時の学習を振り返り、家
  庭での実践への意欲をもつ。
○各グループごとの買い物の工夫について確認させるとともに
  実際の一人当たりの食費を算出させる。

○自分たちのみそ汁作りに必要な材料を、どのように工夫して買っ
  たかについて発表させる。<物の選び方・購入の工夫> 
○相互評価を通じて、各自の実践に生かされるようにする。

○家庭で実践する際にも、自分でうまく買い物ができるように意欲
  をもたせる。


4. 研究の成果と今後の課題
・年間指導計画の中で金銭教育の内容を位置づけることにより、それぞれの題材で指導するべき目標が
 明らかになるとともに、子どもたちが消費者として成長していく過程を把握することができた。
・体験的学習の中で実際に子どもだけでお金を使う機会をもたせることにより、予想以上にどの子も慎重
 に買い物をすることができた。親に買ってもらうのではなく自分が支払うという体験の中で、今まで学習
 した知識を総動員して考え工夫している様子が見られた。
・外部講師の活用やコンピュータソフトを利用することにより、教師だけでは伝えられない経済のしくみ
 や家計管理の仕方について学習させることができた。
 
5. おわりに
 「買い物調査隊」で家族の買い物に同行したことによって、今まで気づかなかった家族の節約の様子や工夫が見えてきている。こうした気づきの中から、後に自分たちが買い物をする際にたくさんのポイントとなるテーマを見つけてることができた。
 ものやお金を大切にし、将来賢い消費者として自立した生活が営んでいけるよう、今後も金銭教育の実践を積み重ねていきたいと思う。
   
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