●徳島県南中学校「消費者教育」研究グループ活動内容(抜粋)
 
 研究主題  自立した消費者として家庭生活を営むことができる
                     子どもの育成をめざして
 
 1.はじめに
 現在の私たちの生活は、たくさんの物と情報であふれ、非常に豊かになってきました。
 消費生活を送る中で、おとなでさえも、物資や情報の取捨選択に迷う昨今、ましてや何事にも興味を持ち、好奇心旺盛な中学生はおとな以上に手探りで消費生活を送っていることに違いありません。
 10代前半の中学生の時期は、ちょうど思春期を迎え、その成長とともに親離れをしたい年頃であり、これは消費生活においても同様であると考えます。また、毎日の消費生活で、実際に直面している課題に気づかず、見過ごしていることもあるかもしれません。
 中学校における教科としての「技術・家庭科(家庭分野)」において、「家庭生活と消費」に関しての学習は、衣食住の学習と並んで、生徒たちの生活には欠かせないことであり、かつ重要なものであるといえるでしょう。
 そこで、販売者がどの様なことを考えているか、一消費者として知っておかなければならないことは何か、行うべきことは何なのか、など様々な観点から、自分を取り巻く消費生活を見つめ直し、自立した消費者の育成をめざしたいと考えました。

 2.グループの取り組み
    〔1〕生徒の実態
 研究を進めるにあたり、生徒の実態を把握するために事前アンケートを行いました。(対象:阿南市内中学校2年生117名)
 

●普段の商品購入先について
 順位 購入先
  1 コンビニエンスストア
  2 スーパーマーケット
  3 自動販売機
※少数意見(増加傾向)…通信販売、インターネット
 
●商品購入時に気をつけていること
 順位 気をつけている点
  1 値段
  2 使いやすさ
  3 品質
  4 機能
※「アフターサービス」や「環境への影響」についてはほとんどの生徒が気にかけていない
 
●商品購入時、選択の手がかり
 順位 手がかり
  1 実際の商品を手に取り見る
  2 テレビCM
  3 家族や友達からの情報
  4 新聞・雑誌の広告
  家庭では身近にある「折り込みチラシ」を情報源にしている生徒は意外と少ない数値が出ています。
 また、生徒たちは、店に足を運んで「実際の商品を手に取り見る」一方で、「店の人」に商品についての質問などしてから購入するのは非常に少ないということが分かりました。
 
●買い物での失敗経験

失敗の内容
・思っていたものと違う。
・買ってみたがあまり使わない。
・もっとほかに安い店があった。などの理由が多かった。

≪アンケート結果から見えてきたこと。≫
○コンビニエンスストア・スーパーマーケットなどの店舗販売での購入が圧倒的に多い。
○商品購入時には、「値段」を重視し、「アフターサービス」や「環境への影響」をあまり考えていない。
○商品購入の手がかりは、「実際に手にして見ること」と「テレビCM」が中心である。
○買い物での失敗経験は約半数の生徒がある。

〔2〕研修会
 「中学生のための消費者教育」について、消費生活アドバイザーの講師の方をお招きしての研修会を行いました。現在の青少年に必要な消費者としての知識や消費者トラブル防止のための方策などについて、教えていただきました。
 中学校の技術・家庭科(家庭分野)では、中学生に「家庭生活における消費の重要性に気付かせ、消費者保護に関する学習を通して、物資やサービスの適切な選択、購入、活用などができるようにするとともに、環境に配慮した消費生活が工夫できるようにすること」がねらいです。
 さまざまな物資やサービスの選択・購入、活用をしている家庭生活で、中学生も一消費者として適切な行動をとる必要があることを学ばせなければいけません。そして、自分を守るために必要な知識とその方法を知り、実際に行動に移していくことの重要性を中学生に伝え力をつけることが、消費者としての自立への第一歩だということを、今回の研修で改めて考えさせられ、学校での消費者教育の重要性を確信しました。
 実際に授業を進めていく中で、まだ社会に出ていない消費経験の少ない中学生に、「契約」や「悪質商法」などのことについて、具体的に伝えることはたいへん難しいことです。中学生にかかわりの深い事例等を取り上げたり、実践的体験的な学習方法を工夫したりして、学習を進めていくことにしました。

〔3〕授業実践
(1)視聴覚教材『徳島県消費者情報センターを訪ねよう!』〜関係機関の紹介〜
 指導要領では、「消費者保護について、クーリング・オフ制度や消費者センターなどの各種機関について取り上げて消費者としての自覚を高めるようにする」とあります。
 「徳島県消費者情報センター」は徳島市中心部に位置し、県南の生徒たちが実際に足を運んで、見学することは非常に難しいことです。そこで、「徳島県消費者情報センター」にお願いして、その視聴覚教材を作成することにしました。
 今までもパンフレットを頂いては、生徒たちに「徳島県消費者情報センター」の紹介をしてきました。相談種類や方法など、ビデオではありますが、パンフレットよりは、動画で、実際の場所を目で確認しながらの方が生徒にはわかりやすいようでした。
 また、同様に阿南市役所の中にも、消費生活についての相談窓口があります。このように住んでいる地域の消費生活に関する相談ができる関係機関を生徒に紹介しました。もしものときに、ひとりで悩まずに、少しでもよりよい方向に解決するために関係諸機関に相談できることも、消費者の自立では大切なことです。

(2)消費生活に関する資料の活用
 授業を行った後に、いつでも生徒たちが手にとって見て読める資料を置くことにしました。教科書で学習したことの確認や、授業では学習しない事柄でも将来のために知っておく方がよいことなど、熱心に見入っていました。

(3)ロールプレイング(劇)
 授業を進めていく中で、身近に起こるだろう悪質商法や、そのトラブルの解決方法について、生徒はたくさんの知識を身につけました。そこで、次にグループを組み、目的を持ったロールプレイを授業実践に組み込みました。
 ロールプレイングを取り入れた目的は、学習で得た知識をより深めるためです。台詞の中には、消費者が悪質商法の手口に引っかからないようにするために、またトラブルを自ら解決へと進めるためにどうすべきかということがでてきます。実際にそれらの台詞を口にすることで、学習してきた内容の理解がより深まると考えました。
 誰に対して、どの様なことを伝えたいのかを考え、台本を選んで、ロールプレイングの練習を行いました。台本の内容はグループによって異なります。違うことをお互いに伝えあい、情報の共有をすることで、生徒通しで伝えあい学びあうことにしました。
 台本の内容は、中学生にかかわりの深い悪質商法に関するもの(教科書に出てくるキャッチセールス、アポイントメントセールス以外に、悪質な通信販売やインターネットショッピング、携帯電話での契約、未成年者契約など)と普段の買い物に関するもの、消費者保護のためのものなどをあらかじめ教師側で選んでおきました。
 中には、おじいちゃんやおばあちゃんに伝えたいという思いから、高齢者向けの台本を選ぶグループもでました。自分たちだけでなく、家族のための安全な消費生活を考えはじめた生徒も見られました。
 
 3. おわりに〜今後の課題〜
 この研究を通して、次々と新しい消費者トラブルが発生している現在、私たち教員が常に新しい情報を入手し、授業実践の場で工夫し、生徒たちに自立できる力を養うことが大切であると痛感しました。生徒に実践的体験的な活動を通して少しでも多くの学びをと思い、研究を進めてきました。
 技術・家庭科(家庭分野)における、消費者教育の研究は、生徒を自立した消費者として育成するために今後ますます大切になってくるでしょう。家庭分野の教員が手を取り合って、研修会をたびたび持つことで、授業実践や指導方法での悩みを語り合い、情報の交換をしながら進めていきたいと思います。
 また、各教科との関連を考え、小学校・中学校・高等学校間の連携や関係諸機関との連携を密にして、消費者教育を進めていくことも大切です。そして、生徒が家庭を巻き込んだ消費生活の実践のできる消費者に育つよう、教師自身が積極的に研修に参加し、指導力の向上を目指そうと考えます。

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