●令和3年度徳島県技術・家庭(家庭分野)消費者教育研究部会活動内容
 研究テーマ 計画的な金銭管理ができ、自立した消費者になるために
 
 グループの概要
 中学校技術・家庭科では,内容Cとして,「消費生活・環境」について学習する。学習指導要領C消費生活・環境より消費生活・環境に関する知識及び技能を身に着け,これからの生活を展望して身近な消費生活と環境についての課題を解決する力を養い,工夫し創造しようとする実践的な態度を育成することをねらいとしている。消費生活の中でも今回は,ライフプランとお金の関わりについて視点を当てた。
   
 実践のねらい

 
成人年齢の引き下げにより、自立した消費者として,責任ある消費行動を考え,実践していく力が必要となってくる。
ライフプランとお金の関わりについて理解し,計画的な金銭管理ができるようにする。
 
 実践の概要
将来,どんな自分になりたいかを考える。
お金には「今のお金」と「将来のお金」があることを知る。
ライフデザインについて考える。

 
少し長い目で将来を想像し,「どう生きていきたいか。」「どんな働き方や暮らし方をしたいか。」について考える。
ライフイベント表・キャッシュフロー表を作成する。
人生の節目となるライフイベントには,どんなものがあるかを考える。(10年間)
ライフイベント表にそって,必要になってくるお金の情報を記入する。
将来に向けた,計画的な金銭管理を行うためにはどんなことが大切か考える。
 
事例1 ライフイベント表・キャッシュフロー表を作成する
  実践主要校である,板野町立板野中学校は,素直で何事も懸命に取り組むことができる生徒が多い。また,学級活動の一環として,「私の夢~こんな自分になりたい~」というテーマのもと将来,どんな自分になりたいかをイメージする時間を設けている。しかし,大多数の生徒が夢や目標ははっきりしているものの,そこに辿り着くまでに,どんなライフイベントがあり,どれくらいのお金がかかってくるかまでは見通しを立てることができないない生徒が多い。これらのことを踏まえた上で,家庭科の時間を活用し,自分自身の夢や目標に沿ったライフプランとお金の関わりについて考えていく必要があると感じた。設定期間は,現在から10年間とし,1年ごとに「働く」「学ぶ」「遊ぶ」「イベント」の項目に沿って,その時の自分は何をしているか予測させた。また,アルバイトや就職した場合の年収と旅行や何かを買うとき,一人暮らしをする際などにかかる支出を年間単位で計算させ,年間収支を計算させた。そして,グループごとに発表会を実施し,発表者に対して,良かった所や改善点などのアドバイスを付箋に書き,振り返りを行った。

      生徒が作成したライフイベント表・キャッシュフロー表 
 
効果と課題
  予定された通り,夢や目標はすぐに記入できたものの,高校卒業後の進路について明確に記入できない生徒がたくさんいた。また,成人式や車の購入,一人暮らしをした際にかかってくるお金についてなども「イメージが湧かない。」と答える生徒が多かった。タブレットを活用し,学費や住居費を調べさせたり,なりたい職業が明確な生徒たちには,給料形態などについても調べさせたりしたことで自分自身の将来の収支について考えることができた。ライフイベント表・キャッシュフロー表の作成では,「思った以上にお金がかかる。」「今回の授業で将来が少し明確になった。」「冷静に考えて,お金が足りない。」などの感想があった。今後は将来の収支について調べる時間をもう少し確保したり,様々なライフプランの例などを挙げたりして,生徒たちがイメージを膨らませやすいように指導していきたい。
 
助成金の使い道
グループワークで使用するホワイトボード関連品
事例2 計画的な金銭管理をしていくために
  事例1で,なりたい自分や将来の夢を叶えるためには,たくさんのお金が必要になってくることを理解させた。少子高齢化が進む日本は近い将来,雇用形態や年金制度もどのように変化しているかも分からない。自身が作成したライフプランを実現させるためには計画的にお金を管理していく具体的な方法を考える必要がある。まとめとして,ワークシートを活用し,「計画的にお金を管理(貯金)するためにはどのようなことが大切か」を考えさせた。また,お金を管理するための具体的な方法についても考えさせた。

               生徒が記載したワークシート 

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生活設計に関するDVDと消費生活とトラブル防止に関するDVDの活用について

  DVDを用いて,実際の生活設計の仕方や具体例を生徒たちに掴ませたり,消費者トラブルは身近であることを感じさせたりすることを目的とした。生徒たちも,映像で見ることにより教科書やプリントよりイメージがしやすいと感じた。中でも消費者トラブルにおいては,若年層でも起きているという事実を知り,これから気をつけていきたいと話す生徒が多かった。生徒たちにとっては,自分のこれからの生活を考えていく上で,とてもいい機会になった。 

効果と課題
  本研究を実施する前時の段階で,生徒たちに「計画的にお金を貯金するとしたらどのようにしますか?」と質問した。生徒の答えとしては,「貯金箱を作る。」「親に預ける。」「無駄なものを買わない。」などの意見が出ていた。事例1でライフプランを立てたことにより,大多数の生徒が,何歳でどれくらいお金が必要になってくるかの見通しを立てることができていた。まとめのワークシートには,「専門学校に通うための学費が必要なので,高校生からアルバイトをし,貯めることが大切と感じた。」「成人式や結婚式などのイベントに向けて,就職後は毎月貯金をしていくべきだと思う。」「貯めようの一言ではなかなか難しいので,貯金用の通帳を作るといいと思う。」などの意見が出た。また,お金の管理方法としては,「高校卒業したら,定期預金をする。」「働き出して,ボーナスが出たら,その時にたくさん貯めておく。」などの意見があり,授業前と比較すると,「いつから・どのように」といった視点で考えることができていた。今後は具体的な方法がなかなか思いつかない生徒への配慮が必要であると考えた。
 
助成金の使い道
グループワークで使用するホワイトボード関連品
 
 研究成果と課題
 夢や目標を達成し,よりよい人生を送るためには,必ずお金が関与してくることについて理解を深めることができた。授業全体の感想として「今までお金についてこんなに考えたことがなかった。」「生活の中で,必要なものをしっかり判断していきたい。」「若いうちからコツコツとお金を貯めていくことが必要とわかった。」などの意見が出た。実際に今すぐに始めることではないが,これからの人生,あらゆる場面で,自分で判断し,行動していくことが大切だと伝えた。
 また,消費生活・環境の学習全体を通して,生徒たちは自らの生活と関連付けて考えることができていた。しかし「お金を稼ぐ」「お金を貯める」などの経験はなく,まだまだ先のことだと感じている生徒も多く,将来に向けてこれからも継続的な指導を続ける必要があると感じた。

令和3年度徳島県技術・家庭(家庭分野)消費者教育研究部会所属校
◆板野町立板野中学校 ◆松茂町立松茂中学校 ◆北島町立北島中学校
◆藍住町立藍住東中学校 ◆藍住町立藍住中学校 ◆上板町立上板中学校
 
 
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