●平成28年度家庭科消費者教育研究部会活動内容
 
 研究主題 より良い消費生活を自ら目指す生徒の育成
 
 1 はじめに
 現行の学習指導要領では中学校技術・家庭科は,生活に必要な基礎的・基本的な知識及び技術の習得を通して,生活と技術との関わりについて理解を深め,進んで生活を工夫し創造する能力と実践的な態度を育てることをねらいとしている。これは,金融教育のねらいである問題をより身近なものしてとらえ,他人事ではなく,自分の問題として現実に即し,自分なりに工夫し,判断し,行動する力を養う,というねらいとも合致している。さらに,次期学習指導要領等に向けた審議のまとめでは育成すべき資質・能力として,
 
 1 何を知っているか 何ができるか(個別の知識・技能)
 2 知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)
 3 どのように社会・世界とかかわり,よりよい人生を送るか」(学びに向かう力・人間性)
が明記された。そこで,今年度は,情報の収集や整理の仕方など,授業で習得した知識及び技術を活用して,よりよい消費生活とはなにかを深く考え,それを自ら目指していける生徒を育てていきたいと思い本研究を進めることとした。昨年度までの研究をベースにし,基礎的・基本的事項をしっかりと押さえた上で問題解決における主体的・対話的で深い学びを実践する授業作りをめざす。
 2 研究の内容
○問題解決学習の過程に基づいた授業を設計し実践する
 主体的・対話的で深い学びを実現する授業を設計するに当たり,教育課程審議会,家庭,技術・家庭ワーキンググループでの学習プロセスを参考にし,授業設計を行った。そのひとつとして,食生活の内容である「食品の選択」の学習で題材としてスパゲティ・ミートソースを取り上げた。
 @ 課題発見
   ミートソースは,スーパーなどに行けば一棚を占めるほどの商品がある。また,冷凍・缶詰・レトルトパウチなど種類も多くあり,価格も様々である。教科書にもレシピが掲載されており手作り品との比較もできる。生徒は今までに食生活の内容で,「栄養素の種類と働き」「食品の栄養的な特徴」「食品の選び方」を学習し,前年度に,消費生活の内容で「情報の収集・整理」「消費者の権利と責任」を学習している。授業で今までの学習のまとめとして「スパゲティ・ミートソースを選ぼう」と課題を設定し,5種類の商品と手作りとして1つを提示し,生徒に選択させる授業を行った。  
 A 決定のための情報の収集と分析/比較・検討
   それぞれの商品情報をワークシートに整理し記入させる。生徒は,はじめに気になる3つを選択し,それぞれについて個々に考えた視点で情報を整理していく。価格,消費・賞味期限,調理時間,手軽さ,食品添加物,製造元,内容量,カロリーなどがあげられた。さらに3つの中でイチオシのミートソースとしてひとつを選択させ,なぜそのソースを選択したのか理由を明確にするため,自分が重視した視点をダイヤモンドランキングさせた。
 B 実習・調査・交流などの実践活動
   次に,グループでの交流を行い,自分が決定したミートソースについて理由や重視した視点を話し合う。また,グループで出てきた視点を整理しグループ内でもダイヤモンドランキングさせた。生徒にとっては,自分が重視していた視点が友達にとっては下位の項目だったり,自分が思ってもいなかった視点を重視していたりして,話し合い活動も白熱した。友達の意見から学んだ視点などはワークシートに色ペンで記入させた。
 C 振り返り 評価・改善
   グループで話し合う中で商品の情報を整理する視点が増えたが,もう少し具体的に思考させるために,さらに条件設定を行った。再思考させる前段階で教師が作成したスライドを見せる。予算制約あり・買い物は必須,人数の制約あり,というように具体的に条件を設定し,改めて個々に検討する。視点の優先順位が変化して,最初に選んだ商品とは異なる商品を選択したという生徒もいる。
   
 3 成果と課題
   〜生徒の感想より〜
 
 
 
 
今回,具体的な場面を設定されBにしていたが,本当にそれでいいだろうかと改めて考えることができた。日常生活ではそのとき,そのときに対応して選択しなければいけないなと思いました。はじめに考えたときはひとつの視点から見ることが多かったけど複数の視点から見ることでよりよい商品を選ぶことができたので,この考え方を大切にしたいです。 
 
 
 
ものを買うときは,そのときの自分の状況によっていろいろな視点から考えなければいけないことがわかりました。また,食べるまでや食べ終わった後のことまで考えて買わないといけないと思いました。
 
 
 
 
物を選ぶときにはさまざまな視点で見る必要があるとわかった。食べ物だけでなく文房具などの食べ物以外のものも多面的に見て選びたいと思った。ものの場合,安いものを何度も買い換えるか,高いものをずっと大切にするかということを昔から母に言われていたことが,この授業によりよくわかったと思う。
 
 
 
 
今日わかったことは,物を選ぶときはさまざまな視点で評価することが大切だということです。また,場面によっても選んだ答えがぜんぜん違ってくるので,値段や何人前だけでなく場合に適したものを選ぶことも大切だと思いました。次,選ぶ機会があれば,今回の学習を生かした選択をしたいです。

 今回の授業実践で,生徒たちは,情報の収集・整理ができ,多面的に見たり比較したりすることができた。また,自分が優先したい視点がわかり,選択した根拠を明確にすることができた。そして,人にはさまざまな価値観があることをお金の使い方(授業では選択の仕方)を通じて理解するとともに,自分の価値観に基づき責任あるお金の使い方を身に付ける(金融教育の目標と方法・年齢層別目標 中学生)ことができたのではないかと考える。課題としては,実生活における追跡調査ができていないことがあげられる。
 食品の選択だけではなく購買行動のすべてにおいて,今回の授業のように深く考えた行動ができるようになってほしい。今後,子どもたちが,さまざまな場面で,学習して知っていること・できることを,個々に工夫して使い,人生を豊かにする消費生活へと結びつけることができるよう願う。
    
                     過去の一覧へ