●令和元年度徳島県技術・家庭(家庭分野)消費者教育研究部会
 研究主題 見えないお金と上手につきあうために
 
 1 研究の内容
  中学校技術・家庭科では,内容Dとして,「身近な消費生活と環境」について学習する。学習指導要領では,消費者としての自覚を高め,身近な消費生活の視点から持続可能な社会を展望して,環境に配慮した生活を主体的に営む能力と態度を育てることをねらいとしている。 
  金融・金銭教育の目指すところ
 あふれる情報の中から適切な情報に基づき,将来や環境を見通して的確に意志決定する力,つまり「自立した消費者」を育成することであり,このことから技術家庭科のねらいと金融金銭教育と目指すところは一致している。
  生徒の実態  対象学年 徳島市国府中学校 2年生 5クラス 164名
  学習前のアンケートから生徒の現状は,買い物経験に乏しく,計画的な金銭の管理をすることが少ないことがわかった。
 さらに生徒を取り巻く環境として,現代社会はお金の流れが見えにくくなっている。
  研究テーマ 見えないお金とは
   将来,生活に必要なお金の流れ
   日常生活に必要なお金の流れ
   キャッシュレス化したお金
  今回は,この三点に焦点を当てて実践した。
  以下 指導の一部を紹介する。
   
 事前課題学習
   
   学習をはじめるにあたって自分の消費生活に課題をもたせるために金融広報中央委員会作成中学生用金融教育教材「生活に必要な金銭の流れを理解し,消費行動を見直そう―「見えないお金」が見えてくる!―」を用い調べ学習を行った。
 
☆教育費
  今後必要な自分の通学や学習に掛かる費用を算出した。
  生徒は,たくさんのお金が掛かることを実感して,親に感謝したいと感想を綴っていた。
  教育の場にはいろいろなコースで費用が違ってくることを知り,これからの進路を切り開けるように今の学習をしっかりしたいと感じた生徒が多かった。
☆将来大人になった自分が欲しいと思うものを考える。
  将来の自分の生活を思い浮かべ,大人になった自分が持っていたいと思う物を考える課題。スーツや万年筆,時計など身につける物を思い浮かべたり社会人として一人暮らしを想定した生徒など,家族に相談して将来の生活を想像して必要なものを考えるなど課題に取り組んだ生徒の様子がうかがえた。中にはまだ,実感がないようであまり具体的なものをイメージすることは難しい生徒も見られた。
★これからの生活にいったい,いくらかかるのか
  将来欲しいものを買える自分になるのか,とこの学習から将来を見据えた消費生活に対する課題を意識することができた。しっかりと今の自分ができる学習を積み重ねて社会に貢献できる力を身につけることの必要性を感じたようだ。
 
 学習計画 0  ≪学活・総合学習の時間を使っての進路指導の一環として学習も可能≫
   
    事前調べ学習を踏まえて,生活設計と家計管理についての学習をすすめることにした。
教材は,一般社団法人全国銀行協会「マナブとメグミのお金のキホンBOOK。
進学や就職・結婚・出産などの人生における・節目のイベントをプランニングした。
 
生徒の感想
高校進学までのことしか考えていなかったので不思議な気持ちになった。
住宅購入や第一子誕生はちゃんと就職して経済的に落ち着いてからが良いと考えた。

 
全体的にみると人生はあったいう間なんだと思った。何があるかわからないので予定を考えるのは大切だと思った。大学にいけるよう頑張りたい。

 
ライフイベントを考えてみてこれからすごく楽しみになった。将来について考えてみようと思った。

 
将来のことを考えてみて「幸せな未来」になるように今を一生懸命頑張って未来につながるようにしたい。
未来のことはまだわからないけど人生には目標が大切だと思った。
  ◎生涯,生活に必要なお金の流れ
  この学習を通して将来の見通しをもつことから生涯必要なお金の流れが見えてきた。
  新学習指導要領の育成を目指す『どのように社会とかかわりよりよい人生を送るか』にあたる学習であったと考える。
 
 学習計画 1  契約と販売方法のいろいろ
   
    契約について生徒に問いかけたところ,関連する出来事にも反応がなく,実生活とはほど遠いイメージであった。日常行っている買い物が契約にあたり法律で保護されていることを知り,契約の成立が合意の場面であることを学んだところ。生徒たちは,とても驚き印象に残ったようでテストの正答率が非常に良い結果となった。
  また,自分たちが18歳になった時に成年年齢が引き下げられることを押さえた。
このことにより,一層自分事としてこの学習をとらえた様子であった。
 
 学習計画 2  支払い方法のいろいろ
   
    支払いには前払い,即時払い,後払いがありそれぞれの支払い方法によるメリットやデメリットによる注意点を踏まえて,購入したいものや買い物するときの状況に応じて使い分けることができることを学んだ。キャッシュレス化の進行について知り,将来にわたって上手に関わるにはどうすれば良いかを考えた。
 
 学習計画 3  三者間契約 信用/クレジットカード利用の注意点
   
    支払い方法の中でも,特に新学習指導要領で新設された,三者間契約クレジットカードのしくみと利用におけるメリットと注意点について学習した。
  一般社団法人日本クレジット協会作成「クレジット博士と学ぶクレジットカード入門(視聴覚教材)を視聴しながら,ワークシートと資料を使ってしくみや使うときの注意点を押さえた。
  成年年齢の引き下げにより,クレジットカードの利用が可能になる若者に対して,有益な活用ができるよう,メリット・デメリットを知り,上手に生活に取り入れられるようにする。
  生徒達は,実生活でプリペイドカードの使用経験があり,同じカード型ではあるが電子マネーやデビットカードなど様々な支払いのタイミングや仕組みの違いがあることについて学んだ。
  携帯電話による支払いや電子マネーの利用については,各家庭のルールに従っている様子が見られた。今後生徒の生活にも使用場面が増えていくと予想される。将来利用できるようになった時を踏まえて,特にクレジットカードは,機械を通して出てきたお金が借金であるということを押さえた。
  生徒の中には,クレジットカードの利用は怖いと思っていたが,包丁も使い方を間違えると危ないのと同じで正しく使うことが大事だと知った。と感想を綴っていた。

  ◎見えないお金であったキャッシュレス化したお金の使い方について,メリットや注意点を押さえ,数字が現実のお金であると認識する力をつけることが,新学習指導要領の育成を目指す『生きて働く知識・技能の習得』にあたる学習であったと考える。
 
 学習計画 4  消費者トラブルの例と対処法
   
    使用教材:(財)消費者教育支援センター/消費者庁作成「もしあなたが消費者トラブルにあったら-消費者センスを高めよう!-」というパンフレットで学習をすすめた。生徒は消費者トラブルの事例を興味深く学んでいた。また、消費者情報センターより資料提供をしていただいたトラブル事例を利用して,ロールプレイングを行った。中学生が被害に遭いやすいトラブルの他,成人したばかりの若者や高齢者が被害にあう事例のパターンを知り,どの年代もターゲットに狙われていることを知り,家族に学んだことを知らせて被害を防ぎたいとワークシートに綴っていた。
  まず事前に学んだ契約の知識とともに,よく考えた消費行動をすることが大切であることをおさえた上で被害に遭ったときにどうのような対処の方法があるかを学んだ。
  身近な相談連絡先全国共通の188番号に相談すること。またクーリング・オフ制度について条件を学んだ。事例の条件を読み取り,申請ハガキに必要な内容が書けるかの実践活動をした。最後にハガキを投函する前に両面コピーをとっておくことを確認した。ハガキに書く実践で印象に残りコピーにより証拠を残すことなど必要な申請方法はテストでの正答率も高かった。
 
 学習計画 5・6  生活にかかるお金について計画的な管理方法
   
     「日々の生活にかかわるお金について」
  一般社団法人全国銀行協会から出ている「シリーズ教材お金のキホン アクティブラーニング型授業プログラム 家計管理編」という教材で学習した。
この教材は,シュミレーションを行いグループワークとシェアリングができる。
一人暮らしを計画している 女性(すずきいくこさん)に対して家計管理アドバイザーとして希望の生活に見合うように費目に対する軽重を班で相談する学習。
       
  名 前 すずき いくこ 性 別 年 齢 25才
特徴 都心の広告関連企業で働く社会人2年目。仕事や職場にも慣れきて,これからもバリバリ働きたい。将来はペット関係での起業を計画していて,そのための貯金や人脈作り,勉強に励みたい。また,日々の癒やしのために,一人暮らしに実家の愛犬を連れていきたい。
希望の条件
【住居費】 通勤が楽な駅近物件で、犬と一緒に過ごしたい。
【水道光熱費】 留守の間でも犬のために冷暖房が必要。
【通信費】 ネットで情報収集や企画のネタを探している。
【 食   費 】 食事は人脈作りも兼ねて、色々な人と外食が多い。
【交通費】 犬と出かけるために、できれば車を持ちたい。
【被服費】 仕事ではブランドの服でお客様に好印象を与えたい。
【教養娯楽費】 ビジススクール(月3万円)に毎週1回通って起業の勉強をしたい。
【 貯   金 】 将来の起業のためにたくさん貯金したい。
手順1  希望の条件を設定されたランクから選択し,希望の生活を実現するために必要な金額を算出する。
手順2 給料(22万円)から非消費支出(4万5千円)を差し引き手取り収入額(17万5千円)を計算する。
生徒達は手取額を知りどうやってオーダーをかなえたらよいか頭を悩ませた。グループ活動により,意見を出し合い,手取り収入額に収まるように熱心に相談する姿があった。
   
 
班が考えたプランニングについて代表者の発表(要約)

 
お金を調節するために,不必要なランクを下げた。ペットがいるので部屋をできるだけ小さくしないようにした。
すべての費目を節約した。
ペットを一人暮らしで飼うのをあきらめた。
仕事に専念できるように,通信費・被服費を大切にした。
家計管理アドバイザーをしてみての生徒の感想

 
生活するには,お金を調整して使わなければいけないと思った。もし一人暮らしをする時は,収入のことも考えて使うことが大切だと思った。   

 
きちんと家計を計算していないと将来困ると思った。少ない給料では,我慢しないといけないことがわかった。

 
 
何を優先して,何を我慢するのかを考えるのは,案外難しいんだと感じた。よく考えると削れる部分がたくさんあった。自分の家のことも考えてみようと思った。
  ◎日常生活に必要なお金がこの学習を通して,計画を立ててお金を管理する必要性が見えてきた。新学習指導要領の育成を目指す『理解していること・できることをどう使うか』という学びにあたると考える。
 
 学習計画 7  消費者の権利と責任
   
    消費者の権利と責任について,本年度徳島県が中学生向けに全国初で作成した消費者教育の学習資料である,徳島県作成「楽しく学ぼう!"あわっ子"消費者教育」を使用して学んだ。「自転車の事例を取り上げ,消費者の8つの権利と5つの責任について知らせる。その後,実際にあった事例を班で一つずつ検討し,その事例の概要と,阻害された消費者の権利,果たされた責任とその結果について整理できるようにする。消費者が権利や責任を果たすことで,企業への意思表示ともなり個人の意見が社会をよくすることにもつながることを知った。次時の環境を考えた消費の仕方の学習へつなげて自分たちの消費行動がよりよい社会を築いていくきっかけとなることに気付かせる一歩となった。
 
 学習計画 8  環境を考えた消費の仕方~未来を支える消費の工夫~
   
    徳島県作成「楽しく学ぼう!"あわっ子"消費者教育」を使用して学んだ。
  豊かな日本で豊富な商品を選ぶことができる生活環境がなりたっている背景について考えた。目の前にある商品が作られた過程における背景を考えることが,これからの消費生活に重要であることを学んだ。SDGsの考えを生活の中に生かし商品選択ができるよう,未来を支える消費の工夫を自分事としてとらえさせたい。この学びは技術・家庭科の各領域で繰り返し触れながら意識を高め続ける必要がある。
  今回の学習を踏まえて生活で心がけたいことを川柳にし,互いの考えを発表し合う場面をもうけた。今までの学びが生かされたキーワードが使われた個性豊かな作品となった。
 
中学校技術・家庭科(家庭科分野)   D私たちの消費生活と環境 
   指導計画 及び使用教材 
 
時数 学習内容<新学習指導要領の項目>
※項目の内容については枠外を御覧下さい
使 用 教 材
事前課題学習
自分に掛かる教育費と大人になって欲しいもの

・調べ学習
●作成/ 金融広報中央委員会
  「生活に必要な金銭の流れを理解し、消費行動を見直そう―「見えないお金」が見えてくる!―」
 0  
生活設計と家計管理
・節目のイベントをプランニング
○研究テーマ 見えないお金と
         将来,生活に必要なお金の流れ
●作成/

一般社団法人
      全国銀行協会
  マナブとメグミのお金の
       キホンBOOK」
 1  
契約と販売方法のいろいろ
 <C(1)ア(イ)>
●作成/
徳島県
  「楽しく学ぼう!"あわっ子"
        消費者教育」 
 2  
支払い方法のいろいろ
 <C(1)ア(ァ)>
○研究テーマ 見えないお金、
          キャッシュレス化したお金
小(1)物や金銭の使い方と買い物
●作成/

一般社団法人
    日本クレジット協会
  「クレジット博士と学ぶ
   クレジットカード入門」
 
 3  
三者間契約
 信用/クレジットカード利用の注意点
 <C(1)ア(ァ)>
 4  
消費者トラブルの例と対処法
 <C(2)イ>
●作成/
 
(財)消費者教育支援センター・消費者庁
  「もしあなたが消費者トラブルにあったら-消費者センスを高めよう!-」
 5  

 6  
生活にかかるお金について計画的な管理方法
○研究テーマ 見えないお金
日常生活に必要なお金の流れ
 <C(1)ア(ァ)>
~家計管理アドバイザー~
 <C(1)イ>
小(1)物や金銭の使い方と買い物
●作成/
 
一般社団法人
      全国銀行協会
  「シリーズ教材お金のキホン アクティブラーニング型授業プログラム 家計管理編」 
 
 
 7  
消費者の権利と責任
 <C(2)ア>
●作成/ 徳島県
  「楽しく学ぼう!"あわっ子"
        消費者教育」 
 8  
環境を考えた消費の仕方
~未来を支える消費の工夫~
 <C(2)ア> <C(3)ア>
  小(2)環境に配慮した生活
●作成/
徳島県
  「楽しく学ぼう!"あわっ子"
        消費者教育」 
  金融広報中央委員会から出ている実践事例集や各種団体からの教材や視聴覚教材が豊富にあり,それぞれの学校の実態に応じて,指導の順序や内容の扱い方,時間配分など工夫しながらそれらの教材を取り入れ,指導することでより専門的で内容が充実した学習活動が可能であることを実感した。 
 
  ◆◇◆◇◆◇◆◇◆ 新学習指導要領における内容 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆
C 消費生活・環境
(1)金銭の管理と購入
ア(ア) 購入方法や支払い方法の特徴,計画的な金銭管理
    (イ) 売買契約の仕組み,消費者被害,物資・サー ビスの選択に必要な情報の収集・整理
  イ 情報を活用した物資・サービスの購入の工夫  
(2) 消費者の権利と責任  
ア 消費者の基本的な権利と責任,消費生活が環境 や社会に及ぼす影響
  イ 自立した消費者としての消費行動の工夫
(3) 消費生活・環境についての課題と実践
  ア 環境に配慮した消費生活についての課題と計画, 実践,評価
 
   
 2 成果と課題
    本実践を通して見えてきた課題は,実生活で購入場面の機会に乏しい生徒にとって学んだことを繰り返し実践することができず学びの定着が図れないことにある。
    そこで,本実践の家計管理の学習では,社会人2年目の設定でしたが「中学生のいる家族設定」でプランニングを考えるなどさらに身近で現実的な事例を取り入れることでさらに,実践的・体験的な学習を行うことも考えられる。さらに,環境に配慮した生活を意識した選択項目も取り入れた生活設計ができるように工夫したい。
  また,生徒が家庭の消費生活に関わる機会をつくるなど,家庭との連携をはかることが大切だと考える。
  最後に小中高の系統的な学習を積み重ねることによって,より深い学びとなることが期待されると実感した。今後,継続的に研究に励み社会と関わり,よりよい人生を送る「自立した消費者」を育てるために努力したい。
 
    
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