●平成19年度江原東幼稚園・小学校活動内容(抜粋)
≪研究主題≫
 ふるさとを愛する心をもち、
 くらしやすい環境をつくるために進んで働く子どもの育成
 
≪主題設定の理由≫
 本校は、平成3年度当時の職員・保護者の尽力によって設置された本格的な炭焼窯が、学校敷地内にある。炭焼きはかつて東俣地域の基幹産業であったが、現在はほとんど行われていない。
 しかし、近年、炭の持つ力が見直され、炭アートも静かなブームになるなど、炭利用の可能性は広がっている。炭焼きを地域の人とともに体験する活動を通して、子どもたちは、労働の価値を知り、ものやお金を大切にする心を育てていくことができると考え、本主題を設定した。
 
≪研究実践≫
(1) 炭焼体験活動の概要
  6月  炭焼窯付近の清掃、炭焼窯周辺の愛称を「こげたんランド」に決定
  7月  「炭のお話」、1回目の炭焼用原木詰めこみ
  8月  炭焼体験宿泊学習、1回目炭取りだし、炭の原木積み出し体験、2回目炭焼き
  9月  2回目炭取り出し、炭切り分け、炭学習、炭洗い、炭煮沸、炭干し、敬老会プレゼント作品作り
 11月  炭袋ラベル用マスコットのデザイン、炭磨き、炭洗い、炭煮沸、炭干し
 12月  炭作品づくり
  1月  炭作品づくり、バザー用お札のデザイン

  2月  学習発表会、炭作品バザー
 
(2) こげたんランド
 炭焼体験活動を行う炭焼窯周辺に「こげたんランド」と愛称をつけることにより、子どもたちはより親しみを持って一連の活動を展開することができた。
 この愛称は子どもたちから募集し、職員を含め投票で決定した。「こげたんランド」は1年生の発案だった。炭焼窯周辺の炭焼小屋、炭置場や炭煮沸かまども保護者の協力で整備され、名前にふさわしい夢のある活動場所になった。
(3) 炭のお話
 炭焼きを実施する前に、講師を招いて「炭学習」を行った。
(4) 炭焼体験宿泊学習
 炭窯への原木詰め込み、火入れから火の管理、炭取り出し、炭切り分け作業と保管という一連の仕事を子どもたちは炭焼先生の指導のもと体験した。
 炭焼体験宿泊学習では、炭焼は昼夜を通しての仕事だということを体験するために夜中の2時に起き出して、火の様子と炭窯から出る煙について炭焼先生から説明していただいた。煙の状態から、炭窯内部の温度や原木の状態を把握している炭焼先生の言葉は、子どもたちの心に印象深く残った。
(5) 炭の原木積み出し体験
 炭の原木は、道路拡張にともなう木立の伐採など、全て地域の方々の提供によるものである。地域の自然環境について子どもたちはこれまでに学習し、豊かな山林がもたらす恩恵について理解を深めてきている。
(6) 炭学習
 炭が焼き上がった後には、校長が「木炭には、なぜ空気や水をきれいにする力があるのだろうか」を課題にした授業を行った。子どもたちは木炭の内部を観察し、その特性である多孔質に気づくことができた。
(7) 木炭を利用した作品作り
 焼き上がった炭を煮沸すると、炭の持つ環境浄化の力を更に引き出すことができるということを学び、炭洗いと煮沸作業を行った。
 炭洗いには、プールの水(東俣谷川の水を揚水ポンプで汲み上げ)を利用。煮沸かまどは、保護者が設けてくれた。もの作りを行うには、適切な設備があるほど効率があがるということが子どもたちは実感できていたようである。
 きれいに洗った炭を「祝い俵」と名付けられた作品に仕上げ、地域の敬老会のプレゼントとし、みなさんにとても喜んでいただいた。炭の使い方を工夫することで、新しい価値を生み出すことができるということについて子どもたちは理解を深めることができた。
 また、きれいに焼き上がった炭ばかりでなく、砕けたり、折れたりした炭を工夫して使い、マグネットクリップなどの小物づくりに取り組んだ。炭をむだなく使うという経験によって、子どもたちのものを大切にする気持ちが高まったと感じた。
 
(8) 炭作品バザー
 2月の学習発表会で、炭焼先生や保護者、地域の人に炭焼体験活動のまとめを聞いてもらうとともに、協力に感謝の気持ちを表すために、炭作品を贈ることにした。その際、子どもたちがデザインし、発行した100円、500円、1,000円のお札を使って、作品を商品として購入してもらうバザーを行うことにした。
 子どもたちは、炭作品の種類によって、100円から500円の範囲で値段を付けた。作品に値段を付けることで、ものの価値を値段として表すことができるお金の働きを感じることができた。
 また、自分たちの労働によって作った商品を、手作りのお札というただの紙切れと交換するという体験を通して、貨幣や硬貨という紙や金属が商品と交換できる価値を持つというお金の役割に気づくこともできないかと考える。
 4つの店を出してのバザー終了後には、売上の計算をした。売上個数と金額が合わない店もあり、お金を慎重に扱うことの大切さを子どもたちは体験できた。

≪おわりに≫
 本年度は、炭焼体験活動により、子どもたちが労働の価値を実感し、ものやお金を大切にする心情や態度を育てていくことに中心をおいて金銭教育に取り組んできた。
 来年度は、子どもたちの自主的・自発的な活動力を高め、地域の外にもバザー等の活動を広げていき、本校の金銭教育の深化を図りたい。
 

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