●令和4年度徳島県技術・家庭(家庭分野)消費者教育研究部会活動内容 |
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グループの概要 |
徳島県技術・家庭(家庭分野)消費者教育研究部会は,徳島県中学校家庭分野研究会の中で,学習指導要領「C消費生活・環境」より,消費者教育に関する研究をしている。生徒たちが,生活者として必要な情報を取捨選択し,消費者として正しく意思決定できる力を育むことをねらいとしている。県内8校が連携し,2年生を対象として授業を実施した。 | ||
年間スケジュール |
消費者としての自覚(1時間) | ||
購入方法と支払い方法(1時間) | ||
キャッシュレスの支払い方法・クレジット契約のしくみ(1時間) | ||
キャッシュレス利用のメリット・デメリット(1時間) | ||
バランスよく計画的な金銭の管理(1時間) | ||
消費者トラブルとその対策(2時間) | ||
何を考えて決めますか? 様々な支払い方を生活に上手に取り入れるための工夫 ~意思決定のプロセス~ (1時間) |
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消費者としてできること ~権利と責任~(1時間) | ||
省エネルギーと持続可能な社会 ~SDGsを考える~(1時間) | ||
持続可能な消費生活を目指して ~SDGsとの共生を目指して~(1時間) | ||
研究主題(テーマ) |
中学生にとって,めまぐるしく変化する消費生活の環境に対応する力の育成は急務となっている。これまで消費生活の課題とされていた環境問題,悪質商法による被害や多重債務などのことに加えて,変化するお金の形やその使い方へも対応しなければならない。お金に対する正しい知識を獲得し,その適切な使い方を考えながら,キャッシュレス化などの新しい変化に対応する消費者教育を実践することで,これからの生活を展望しながら,身近な消費生活と環境についての課題を解決する力を養い,工夫し創造しようとする実践的な態度を育成することを研究テーマのねらいとした。 | ||
研究目標 |
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研究計画 |
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実施教科・実施学年 |
技術・家庭科(家庭分野),中学2年生 | ||
金融教育プログラムに該当する4分野の項目 |
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利用教材・資料 |
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指導方法・指導内容 |
【実践1】 自分の生活における金銭管理の仕方を考える |
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まだまだ生活経験が少ない中学生が,これからの生活を展望しながら金銭管理を考える手段として,消費者教育支援センター製作の消費者アクションゲームⅡを活用して学習した。3~4人ごとのグループに分かれ,ゲームを通じて,消費者市民社会の一員として,一人ひとりの消費者力を高めることを目標とした。ゲームの感想等を班でまとめ,その後,各自で自分の生活における金銭管理の仕方を振り返り,未来に向けた新たなシミュレーションを考えることで,今後の生活の仕方を考えた。 ゲームの中では,安全や契約,情報,エシカルに関わる消費生活上の問題と課題に気づくことができた。その気づきをもとに,自分の個々には小さな力である消費者の行動が,集まっていくことで社会や環境などに与える影響を知り,中学生も公正で持続可能な社会の発展を目指す消費者市民社会の一員として行動できることを知ることもできた。 |
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【実践2】 自立した賢い消費者をめざしたロールプレイングの実践活用 | ||
安心・安全に関する問題,環境問題,悪質商法による被害や多重債務などの社会問題を知り,それらに対応する力を育むためロールプレイングシナリオ集を活用した。3~4人のグループに分かれ,シナリオをもとに様々な状況を模擬体験し,問題や課題に対して考察を深めた。キャッシュレスの使い方など,時代の変化に対応した要素もシナリオに取り入れることで,賢い消費者をめざした模擬体験を実践することができた。新しい支払いの方法やどのようにお金を保持していくことが有益か考えて消費できる,賢い消費者をめざした。 また,タブレットを使った調べ学習や配付資料を活用しながら,トラブルに巻き込まれた時の相談方法やその対応の仕方を考えた。さらには,それらを回避するための方法をまとめ発表した。 |
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生徒や保護者の反応 |
徳島市城西中学校は自然環境に恵まれた地域でありながら,交通の便がよく県内外の都市部や商業地へのアクセスも容易である。店舗も多く,生徒自身で販売店に足を運び,買い物をすることも多い。就職や進学を機に親元を離れ暮らす生徒は多く,自立した消費者として,生活における金銭管理の仕方を考えることができる力の育成は重要である。 授業前のアンケートでは,お金を使うときの消費行動に問題や課題があることを認識している生徒は80%を超えたが,具体的に問題や課題に対してどのように行動するかを明確に記述できる生徒は少なかった。 授業でまとめたプリントから思考の足跡をたどり確認すると,DVD教材や書籍を活用・提示したことは学びが多く,多くの生徒が消費行動の問題や課題について具体的に記述し説明できた。実践1後のまとめでは,SDGsやエシカル消費などの取組について,「誰がつくっているか,なぜ安いのかを考えて買い物をしたいと思う。」「リサイクル素材や環境に優しい製品を選びたい」など,何を考え行動すべきか,多くの生徒が明確に記述することができた。さらに,消費者市民社会の一員として考えながら消費行動をする経験は,多くの生徒にとって新しい学びとなった。お金の残金だけでなく,環境や道義的責任までを見通した金銭管理をする力を育むこともできた。 また,自分たちが店舗販売以外に,通信販売・オークション等,様々な販売方法を利用していること,キャッシュレス化によって手元にある現金を管理するだけでは不十分であることに気づいた生徒たちは,消費者トラブルに対し危機感が芽生えたようでもあった。実践2においては,シナリオを使ったロールプレイングを実践し意見交換することで,消費者トラブルへの対応策を理解できた。ほぼ全ての生徒が,何らかの対応策を記述することができ,そのうち84%は複数の対応策を記述し,状況に合わせ,いつ,どこに相談するかまで,上手に整理しまとめることができていた。 本研究において,生徒たちは,自立した消費者として成長することができた。授業後のアンケートでは,金融教育について興味をもった生徒は88%となり,授業前に比べ24ポイント上昇した。当たり前のようにキャッシュレス決済を利用している生徒が多かったので,実践が進むにつれ,その有益な利用方法や利用価値を生徒同士が自発的に意見交換する姿は印象的だった。 |
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