●令和4年度徳島県立池田高等学校定時制課程
 
 ≪研究主題≫
  
Let's 金トレ( Financial Training )
     ~全校生徒18人で鍛える金融リテラシ
 
 主題設定理由
 
 本校は県西部に位置する夜間定時制高校である。全校生徒は4学年合わせて15名と非常に規模が小さく、多くの人々とコミュニケーションを図る機会が少ない上、 社会経験を積む機会に乏しくなる傾向がある 。 そのような生活能力を効率的に身に付けることが困難な環境において、これまで生徒と関わる中で、よりよい家計や持続可能な社会に向けた消費者としての意識、将来を見据えた生活設計への関心の低さが窺えた 。また、学校での教育実践としては、家庭科や公民科において、金融や財政、消費者問題などについてある程度学習を進めてきたが、金融教育においては特定の教科の指導に偏りがあり、学校教育以外の家庭や地域社会との連携も希薄であった。
  これらの現状を踏まえ、国内外の様々な問題に起因する先行き不透明な現代社会において、生徒の将来に危機感を抱いた。そして、今後は金融教育を教育活動全体の課題として捉え、学校・家庭・地域社会の連携を密に図りながら、ICTを活用した金融教育を充実させ、生徒一人ひとりの豊かな人生や新たな価値観の創造、生徒たちの自己実現や進路実現に向けた主体的で深い学びへの取組が必要であることを実感し、現代の変化の激しい社会を逞しく生き抜くために重要と考える金融リテラシーをより一層生徒に育むため本主題を設定した。


 研究目的
 
 消費者として自己の権利と役割を理解し、健全な消費行動と意思決定ができる力を身に付け、主体的な選択と行動を通じて、消費者と事業者との間の情報の質及び量などに起因する消費者被害を回避し、生徒の現在及び将来に向けた消費生活の安全・安定の確保と向上を目指す。そして、お金の様々な働きを理解し、自分の暮らしや取り巻く社会環境について深く考え、自分の生き方や価値観を磨きながら、経済的・心理的により豊かな自立した生活や、よりよい社会づくりに向けて、主体的に行動できる知識や態度、思考力や判断力などの金融リテラシーを生徒に育成する。

 研究目標
 
 教科学習において、家庭科や公民科を中心に、お金や金融の仕組み、自分の暮らしや将来の生活設計・家計管理 、自分と社会との消費による関わりなどについて理解を深める。さらに、大学・地域社会、その他専門機関と連携した総合的な探究の時間における、総合的・横断的な課題研究及び体験的学習などを交えながら、自ら課題を見つけ、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決するための金融に関する資質や能力の向上を図る 。
  ○財務的自立に向けた生きる力の向上:
生徒が自分自身や家族を支えるために必要な資金を管理し、貯蓄することができるようになる。
○金融知識・スキルの向上:
 生徒が金融市場での取引や投資などを行うために必要な知識やスキルを身に付け、リスク管理を行うことができるようになる。
○消費者問題への対応力の向上:
 生徒が金融商品やサービスを利用する際に、適切な知識を持って判断し、自分自身を守ることができるようになる。
○社会人としてマナー・スキルの向上:
 生徒が社会で求められるマナーやビジネススキルを習得し、将来職場で必要なコミュニケーション能力や職務遂行能力を高める。
 
 本年度の取り組み
【1学期】
〈教科学習〉
◇家庭科:「自立した消費者とは」 
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「家庭基礎ともに生きる明日をつくる(教育図書)」
指導方法・指導内容
 身近なものやサービスの購入について情報の収集を行い、契約の意義や消費者保護の施策についても理解を深め、消費者トラブルへの対応について考察した。
◇英語科:「Shopping at a Flea Market」  
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「COMET English Communication (数研出版)」
指導方法・指導内容
 フリーマーケットでの買い物の表現を使った英語の対話について考え、相手にわかりやすいコミュニケーションの仕方などについて考察した。
◇公民科:「社会を作る私たち」
金融教育プログラムに該当する分野 キャリア教育に関する分野
利用教材・資料 「詳述公共(実教出版)」
指導方法・指導内容
 他者との協働により当事者として国家・社会などの公共的な空間を作る存在であることについて多面的・多角的に考察した。
 
〈学習研究〉
◇金融教育ホームルーム
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
利用教材・資料 「日本の財政を考えよう(財務省)」・「日本の財政関係資料(財務省)」
「これからの日本のために財政を考える(財務省)」
指導方法・指導内容
 財務省四国財務局と連携し、タブレット端末を活用したグループワークを通して国家財政について考える中で、人生・家計・経済などの社会のお金のつながりをアクティブ・ラーニングで理解を深めた。
◇ビジネスマナー教室
金融教育プログラムに該当する分野 キャリア教育に関する分野
利用教材・資料 「オリジナル教材・資料」
指導方法・指導内容
 地域のマナー講師と連携し、好印象に始まり、好印象に終わるための他者との接し方について考え、好感度アップの方法やマスク時代に必要な伝え方について模擬面接などを通して理解を深めた。
〈校外学習〉
◇市中銀行について学ぶ
金融教育プログラムに該当する分野 生活設計・家計管理に関する分野
金融や経済の仕組みに関する分野
消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
キャリア教育に関する分野
利用教材・資料 「オリジナル教材・資料」
指導方法・指導内容
 阿波銀行と連携し、預金業務や貸出業務、為替業務など、業務内容について理解を深め、社会のお金の大きな流れとの関わりの中で個人の生活設計や家計管理も学んだ。
 
【2学期】
〈教科学習〉
◇家庭科:「食生活とは」
 
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「家庭基礎 ともに生きる 明日をつくる(教育図書)」
指導方法・指導内容
 食品添加物、輸入食品、環境汚染など、身近な食品の安全性について問題があることに気づかせ、消費者としての食生活について考察した。
◇数学科:「経済と数学」
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「数学活用(実教出版)」
指導方法・指導内容
 ローンという考え方やローンの返済には様々な種類があることについて理解を深めた。また、均等分割払いのしくみについても理解を深めた。
◇公民科:「経済活動の在り方と国民福祉」
  
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「高校政治・経済新訂版(実教出版)」
指導方法・指導内容
 多様な契約及び消費者の権利と責任、職業選択、雇用と労働問題、少子高齢社会における社会保障の充実・安定化などに関わる現実社会の事柄や課題について考察した。
〈学習研究〉
◇金融教育講演会
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
利用教材・資料 「オリジナル教材・資料」
指導方法・指導内容
 実業家とリモートで連携し、銀行・生命保険会社・証券会社などの金融業界の裏側について理解を深めながら、お金の賢い使い方について学んだ。
◇ビジネスマナー教室
金融教育プログラムに該当する分野 キャリア教育に関する分野
利用教材・資料 「オリジナル教材・資料」
指導方法・指導内容
 地域のマナー講師と連携し、社会人としての心構え、社会人としてのマナーの基本、社会人としてのコミュニケーション術などについて理解を深めた。
◇成果発表会
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
指導方法・指導内容
 SDG’sやESG投資などについての学習研究を通して学んだ学習成果を学校全体で共有し、深い学びにつなげた。
◇成果展示
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
指導方法・指導内容
 学習研究を通して学んだ学習成果を学校祭で展示し、地域社会で共有して消費者トラブル防止の啓発や金融の基礎知識や金融リテラシーの啓蒙などにつなげた。
 
【3学期】
〈教科学習〉
◇成果展示
金融教育プログラムに該当する分野 生活設計・家計管理に関する分野
利用教材・資料 「家庭基礎 ともに生きる 明日をつくる(教育図書)」
指導方法・指導内容
 家族の生活の場について考え、住居に対する要求が、家族構成、ライフステージ、生活の価値観などによって異なることなどについて理解を深めた。
◇国語科:「人はなぜ仕事をするのか」
金融教育プログラムに該当する分野 キャリア教育に関する分野
利用教材・資料 「現代の国語(第一学習社)」
指導方法・指導内容
 『人はなぜ仕事をするのか』を読解し、本文で使われている「パス」という言葉の意味を考え、筆者が述べる仕事の本質について考察した。
◇公民科:「経済活動の在り方と国民福祉」
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
利用教材・資料 「高校政治・経済新訂版(実教出版)」
指導方法・指導内容
 世界恐慌や日本のバブル経済崩壊、通貨危機やリーマン・ショックへの関心を高め、グローバル社会の経済や金融の特質について考察した。
〈学習研究〉
◇金融教育ホームルーム
金融教育プログラムに該当する分野 消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
利用教材・資料 「オリジナル教材・資料」
指導方法・指導内容
 SMBCグループとリモートで連携し、消費生活に関する基礎知識について理解を深めながら、「成年年齢引下げ」に伴う消費者の自立と責任について学んだ。
◇租税教室
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
利用教材・資料 「やさしい税金教室(日本税理士会連合会)」
指導方法・指導内容
 税の役割や申告納税制度の意義、納税者の権利や義務などについて理解を深めながら、納税者として社会や国の在り方を考察した。
◇成果展示
金融教育プログラムに該当する分野 金融や経済の仕組みに関する分野
消費者生活・金融トラブル防止に関する分野
指導方法・指導内容
 学習研究を通して学んだ学習成果を地域のショッピングモールで展示し、地域社会で共有して消費者トラブル防止の啓発や、金融の基礎知識や金融リテラシーの啓蒙などにつなげた。

 実践1年目の成果と課題
   アンケートで、学校で金融教育を始めてから金融に関する理解が深まったと肯定的に答える生徒の割合が60%と決して高い数字ではなかったが、金融について学校で学習する以前は関心が低かったと回答する生徒の割合が80%であったことを考慮すると一定の成果を得られたと考える。そして、学習展の地域や保護者などからの評価は高く、称賛や激励の感想が多く見られた。また、今年度の金融に関する学習を通して生活設計・家計管理(将来に向けた計画的な預貯金や資金の運用など)、お金の計画的な使い方などについて適切に実践できる自信があると肯定的に答えた生徒の割合は46%と高くはなかったが目標達成に一定の示唆を与えることはできたと考える。
 以上のことから、実践1年目として金融について生徒の関心を高め、ある程度の知識の理解を深めることはできたが、一番の目的である、お金の様々な働きを理解し、経済的・心理的により豊かな自立した生活設計に向け、主体的に行動できる知識や態度、思考力や判断力などの金融リテラシーの習得は不十分であったと思われる。課題が残った要因は多々あるが、実践して感じたことの、一つは金融や財政の概念や、金融用語が難解であり、一定レベルまで理解するには時間がかかることである。また、ロジカルに自己の将来を想像することの困難さもあるため、金融に関してより丁寧な説明の必要性や、身近なところから生活の中のお金の動きをイメージできるような工夫の必要性も実感した。投資についても、必ず利益が得られるものではなく、ギャンブル的な危険性が高い商品と捉える生徒が多く、拒否反応的な状態であった。ある意味金融トラブル防止への正当な理解であるが、金融や経済などの知識を深めることができれば自己の人生を豊かにするものでもあるため、十分配慮しながら情報を提供する必要性を感じた。これらの反省点を踏まえ、次年度はさらに熟考しながら金融教育をブラッシュアップしていきたい。
  
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