― 事 例 ― |
5
月
14
日 |
この日は全員で田植え。稲を「お米の赤ちゃん」であると伝えると,とても大切そうに優しく指3本でつかんでいた。それを1人ずつ園庭の端に作ったミニ田んぼに植えていく。「うわっヌルっとした!」「ドロドロじゃー!」と粘土質の田んぼの泥に驚く幼児たち。無事に植えて保育室へ帰っていると,「お米おっきくなるかなあ?」とダイキが教師に聞く。「どうだろうなあ。おっきくなるようにみんなでお世話頑張ろう!」と教師が答えると,「うん!」と元気に返事が返ってきた。 |
5
月
15
日 |
「お米おっきくなったかなあ?」と外に出て一番に稲の様子を確認しに走っていく幼児たち。「あれ,まだちっちゃいなあ。」というリョウタ。「これから秋までちょっとずつおっきくなるからね。みんなが運動会終わったぐらいには食べられるかな?」と教師が答えた。「お水あげんでもいいん?」とモモ。「お米は,お水を田んぼに溜めておいてゆっくり吸っていくから,このお水が少なくなったら足してあげるんよ。」と教師が言うと,「お米ってのんびりやさんやなあ。」とケントがつぶやいた。
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5
月
29
日 |
戸外での活動の合間に年長児のソウタが「先生来てー!」と田んぼの中を覗き込んで驚き,教師を大声で呼ぶ。その声を聞いてコウタロウとハルトも教師と一緒に田んぼのところへと駆け付けた。「これ見て!なにこれ!?」とソウタが田んぼの中を指差して言う。田んぼの中では放流したオタマジャクシと一緒に緑の細長いものが動いている。「これはホウネンエビっていうエビさんよ!」と教師が答えると,「エビ!?なんで海ちゃうのにエビがおるんよ!」とコウタロウがすかさず言う。ハルトも「ほんまやなあ。」と繰り返す。「このエビさんは綺麗な水の田んぼにしかおらんめっちゃ珍しいエビさんなんよ。」と教師が説明すると,「へえーかわいいなあ」と愛おしそうに3人が見つめていた。
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9
月
2
日 |
夏休みが明けて登園してきたもも組の幼児たち。保育室に入ってくるなり大きな声で,「先生!稲のところにお米みたいなつぶつぶがついとる!!」と言う。「ほんまに!?見に行こう!」と教師も慌てて田んぼのところへと向かう。稲の葉っぱの間から稲穂が少し顔をのぞかせている。「これがお米なん?」とリョウタが不思議そうに教師に聞く。「そうそう。これがお米なんよ。でもまだ食べることはできんのよ。葉っぱもお米も黄色くなってきたらみんなで収穫しような!」と教師が伝えると,「うん!いつ黄色くなるか見よるわ!」と元気に答える幼児たちだった。
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10
月
1
日 |
収穫した稲穂の脱穀を教師が提案すると,「やってみたい!」と言うもも組の幼児たち。牛乳パックでできる方法をやって見せるとすぐに牛乳パックを持って教師の周りに集まってくる。教師の動作を見よう見まねでやってみたり,教えてもらいながら挑戦してみたりするが,「あんまりとれんなあ・・・」と困った様子の幼児たち。「ぐって力を入れて牛乳パックの入り口を閉めとかなあかんのよ。力がいる仕事やから頑張って!」と教師がアドバイスする。「あ!できた!」「ほんまに力がいるなあ。」と少しずつコツをつかむ幼児が増えていく。「ここをこうやって持ったらいいんよ。」と,自然に幼児同士で自分なりのコツを伝え合うようにもなっていった。「見てー!もうこんなに集まってきた!」と時折牛乳パックの中を確認しては教師や友達と見せ合って成果を喜び合う。「もう力入れすぎて手が痛いわ。」とリサが言うが,その顔は言葉とは裏腹にとても明るかった。「お米屋さんは大変やなあ。」とコウタロウが言うと,「ほんまやなあ。めっちゃ手が痛くなるもん。」とアユミも続けて言う。「昔はこうやってしよったんやって。今は機械があって一気にたくさんのお米をこうやって集められるけどな。でも,やっぱり大変よな。」と教師が付け加える。すると,「お米って大事やな。」とダイキが静かにつぶやいた。 |
10
月
10
日 |
待ちに待った自分たちで育てたお米でおにぎりを作る日。「はよ食べたいわ。」と朝から待ちきれない様子の幼児たち。「今日までたくさんのこと頑張ってきたお米やもんなあ。」と教師が感慨深そうに言うと,「もう手がなくなるかと思ったわ!」とコウタロウが言う。
炊き上がったお米が保育室に届くと,「わあーおいしそう!」「いいにおいがする!」と大興奮の幼児たち。ラップを敷いた手のひらにお米がのせられると,「もう食べてしまいそう。」とリョウタが思わず言葉に出してしまう。「食べたくなるよなあ。でもそこにみんなの気持ちを込めておにぎりにしたら,きっともっとおいしくなるよ!」と教師が伝えると,「うん!」と言って優しく握っておにぎりを作る。
「いただきまーす!」と大きな声であいさつをし,出来上がったおにぎりを一口食べた瞬間に「おいしーい!」と自然に言葉があふれてくる様子の幼児たち。「こんなにおいしいなんて。」とリサが驚いたように言うと,「お家のご飯よりも,給食のご飯よりもおいしい!」と自分が手掛けたお米の味に感動した様子のコウタロウ。「僕ゆっくり食べよう。」とケントが言うと,「ほんまじゃ!」「ゆっくり食べよう!」「すぐに食べたらもったいないもん!」と口々に言ってじっくりとお米を味わっていた。
それから,給食のご飯もお茶碗についた米粒を見ると,「あ,もったいない。お米って大事なのに。お米がかわいそうでえ。」と幼児同士で伝え合う姿が見られるようになり,ご飯だけでなく,いろいろな食べ物に対して大切に食べようという気持ちが感じられるようになってきている。 |