●令和元年度上板町立高志小学校活動内容
 
 ≪研究テーマ≫
 
 持続可能な社会を構築するためのエシカル消費の普及
 
 1 研究の目標とねらい
 
  伝統文化を継承しSDGs達成のために生産・消費に関する体験・交流等の具体的な活動を通じて、生産・消費に関して合理的な意思決定ができ、社会の一員(消費者)として、よりよい社会の発展・持続可能な社会の構築のために、伝統文化を継承・発展させ積極的に行動できる児童の育成を図る。
   
 2 研究の仮説
 
(1)
 
 
消費生活に関する4領域(生活の管理と契約・商品やサービスの安全・情報とメデ ィア・消費者市民社会の構築)で豊かな知識・技能や価値観を身につけることができれば、日々の消費行動を変えエシカル消費者になることができるのではないか。
(2)
 
 
多様な主体(PTA・地域住民・生産者・NPO・企業・消費者行政の関係機関等) の体験・交流活動を通した協働により、世代を超えて社会経済の影響を考えて行動するエシカル消費者になることができるのでないか。

 3 伝統文化の六次産業化とエシカル消費の推進
  【5年生の実践】
 
(1)実践目標 

 
徳島・上板の伝統文化を受け継ぎ、6次産業として新たな藍として発信する6次産業グループ「WATANABE’S」(ワタナベズ)の方々から上板の藍染め(伝統文化) のよさ・エシカル商品のよさを学ぶ。

 
栽培・製品作り・販売の流れを体験的に学び、商品の背景を見る大切さを学び、商品の価値とお金の関係性を理解し伝統文化を大切にできる自分たちの日々の消費行動につなげる。

自分たちの藍製品や藍のよさをホームページ、SNSで国内・海外に発信する活動を通して阿波藍のよさやエシカル消費の価値を発信すると共に情報整理・分析力・活用力等を高める。
 
(2)具体的実践 
 4月
中旬
「藍染のよさ・藍製品・海外での評価」という内容でWATANABE’S代表による外部講師の授業を行い、伝統文化のよさとエシカル消費のよさについて学んだ。
 5月
初旬
5年生児童がWATANABE’Sの指導を受け畑に藍の苗の移植を行った。(移植した藍の苗は4年生の3月に種まきをしてポットで育てたもの)その後、7月まで定期的な除草、土寄せ、施肥を行い藍の栽培に携わることができた。
 6月
下旬
海外から阿波藍を学ぶために移住しているアメリカ人・シンガポール人から阿波藍の魅力についてインタビューをしてまとめる。
 7月 夏の暑さの中で藍の葉の収穫(刈り取り)を行い、さらに、こなし(藍葉を細かく刻み乾燥させる)まで協働で作業する。
10月
上旬 
蒅づくりの寝せ込み(乾燥させた藍葉の発酵)の体験を行い、小さい種から染料の原料ができるまでの工程を体験的に学ぶ。この過程において子ども達は伝統文化の奥深さとエシカルな染料をつくるための労働の価値を学ぶ。
児童はWATANABE’Sから指導を受け家庭科・総合的な学習の時間に、それぞれの児童が販売したい製品の縫製を行う。その後、縫製した商品(エコバッグ、巾着等)を藍染めし販売用の製品を仕上げる。さらに、同時並行的に「阿波藍のよさ」について、伝統を受け継ぐ藍師さんに実際にインタビューしたり、ホームページで調べたりと探究的に学習し、ポスターをつくる。今まで自分たちが身につけている衣服は化学染料が中心で安価で大量に生産されている流通の仕組みについても学ぶ。
11月
エシカル製品の価値・値段設定について、各グループで話し合い自分たちの商品の値段付けを行う。今までにかかったコスト(布代金・蒅使用料・人件費・利益等)を計算し定価を決定する。この定価を算出する過程において、藍染め商品が一般に市販されているものと比較して非常に高価になる理由を認識することができるようにした。 
市場で販売されている高価な商品が、「なぜ高価になるのか」子どもたちは製品ができるまでのすべてのプロセスに関わることにより理解することができるようになった。商品の背景を見ることができるエシカル消費の意義を体験的に学ぶことができたのは伝統文化を継承するために有効である。お金と商品の価値の関係性を体験・交流活動を通して深く学ぶことができた。
 
12月 ICTを活用してフリーマーケットアプリで自分たちの商品の販売に取り組む。フリーマーケットアプリの使用に際して、情報モラル学習を適切に行い、ICTを活用する際のリスクとメリット等について学ぶようにした。
フリーマーケットアプリでは子ども達の商品は、なかなか買い手が見つからずに予想以上にエシカル商品を売ることに苦労した。Wed上でどのように商品を宣伝すればいいのかを何度も何度もグループ別に話し合い工夫を重ねた。フリーマーケットにおいて商品が売れた時には、喜びと同時に自分たちの苦労とお金の価値を再認識できた。
 
*フリーマーケットの出展、販売については教職員が管理する。
フリーマーケットアプリで商品が売れた時の子ども達の姿を記録する。同時に今までは商品にあきたり、少し古くなったりするとすぐに買い換えるという考えや態度だったことを見直す必要があるということも話し合い消費行動の変容について話し合う。
    
 4 エシカル消費について考える
    フリーマーケットアプリでの販売終了後に、売り上げ(利益)や生産・販売活動の楽しさや苦労について学級全体で話し合った。今まで商品を購入する際に、商品ができるまでのプロセスについてイメージしたこともなく、商品の価格がどのように決定されるかも考えたことがない子供達が多かった。しかし、これらの体験により、商品ができるまでの背景を考え、価値ある物を大切に消費することの重要性を学ぶことができると感じた。さらに、消費行動が社会を少しずつ変えることにつながり、持続可能な社会についても学ぶことができるようにする。消費行動の変容が地域経済の発展や伝統文化を守ることにつながることも話し合うことができた。
 SDGsに示されている「つくる責任・使う責任」について伝統文化の継承・発展とリンクさせ体験・交流・探究的に学ぶことができるようにした。
    
 5 教職員研修の充実
    新学習指導要領に記されている社会に開かれた教育課程、カリキュラムマネジメント主体的で対話的で深い学びについて5年生の教育実践を中心に全教職員で研修ができたことは非常に有意義であった。今後も「金融・消費者教育」を核に他の教科等との関連を見直し教科横断的に質の高いカリキュラムを編成し実践内容を充実したい。
    
 6 研究の成果と今後の課題
 
(1)持続可能な社会を創るための豊かな知識や価値観を身につける。
    高学年児童は消費生活・金融に関して課題探究のための体験・情報収集・整理・表現 活動を充実させSDGs12番目の目標(つくる責任・使う責任)について学ぶことができた。本校PTA・地域企業 ・地域農家、徳島県庁の支援を受け、体験的な学習を通して、子ども達は、持続可能な社会をつくる一員として必要な知識や技能、価値を幅広く学ぶ事ができている。
 
(2)多様な主体(企業・農家)とのコラボレーションにより、
    社会経済の持続可能性を考えて行動できる人になる。
 
   消費活動は子どもの身近な社会の中で行われる実践的な行動である。したがって、実際にエシカルな消費社会の構築をめざす方との学びは今まで子ども達が認識していなかった領域の知識・価値・態度(行動)を学び、一人一人がエシカルな消費者になることにより、それが地域・日本・世界に広がり、世界規模の課題を解決する第一歩になることを実感することができた。特に高学年の児童は、自分は生まれた時から消費者であり、地域社会・日本・世界が消費行動という経済活動で繋がっていることを学ぶ事ができつつある。
  金融・消費者教育を推進するにあたり、社会科・家庭科・図工・総合的な学習の時間等の関連性を明確にしたカリキュラムマネジメント、社会に開かれた教育課程を創造し文化的環境・経済環境についてより実践的な知識・技能を身につけることが必要であると考える。これらの基礎的・基本的な知識や価値観がなければ、消費行動を行う時に、理解を伴った エシカル消費者に成長するのは難しく持続可能な社会づくりのために行動できない。より充実した実践を展開するためにESDで育てたい資質・能力を一層明確にし、社会に開かれたかつ教科横断的なカリキュラムを編成し実践を継続したい。
    
 7 おわりに
  高学年を中心に「消費者市民社会の構築」の領域を中心に体験・交流活動を積極的に 取り入れながら金融・消費者教育を推進してきた。一人ひとりのエシカルな消費行動が、よりよい消費者市民社会をつくり、持続可能な社会を創ることを確信して、金融・消費者教育を推進する。

 

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