●平成28年度徳島県立城西高等学校神山分校
 
 ≪研究主題≫
  高校における金銭・金融教育〜賢い消費生活を送るために〜
 
 実践の趣旨
 
 城西高等学校神山分校は徳島市からバスで1時間ほどの神山町のほぼ中心にあり,全校生徒は85名の小さな山の分校である。造園土木科と生活科の2科を有し,生徒の半数は卒業後すぐに社会人になる。中には早くに家庭を持つ者もいる。
 選挙権が18歳に引き下げられ,成人年齢も18歳にという議論がある中,たちまち契約当事者としての責任を高校生で持つ可能性も大いに出てきた。社会の経済や金融の仕組みを理解させるとともに,自分の経済(家計)管理を,自信を持ってできることは,高校在学中に身につけさせておかなければない大切な知識である。実践1年目は「賢い消費者」であるための理論的な学習を重ねてきたが,実践2年目はもう少し広い視野で経済活動を体験的に捉える実践を加え,自立した社会人としての生きる力を醸成したいとの思いからさまざまな取り組みをおこなった。
   
 実践の概要
   1.通常の授業における指導
 
   通常の授業では昨年とほぼ同内容の指導を行った。実践の学年は同じなので学ぶ生徒は昨年と異なっている。具体的な内容は以下のとおりである。
 
  ・賢明な消費者として(現代社会・3年)
・消費生活トラブルの実際と対処(現代社会・3年)
・保険のシステムと注意点(現代社会・3年)
・日本の金融システムについて(現代社会・3年)
・不動産賃貸契約時の留意点(現代社会・3年)
・国民年金について(現代社会・3年)
・金融関係のカードの種類と注意点(社会科・全学年) 
・時事問題から時流に応じた経済の話題について知る。(現代社会・3年)
・消費行動を考える(家庭総合・1年)
・経済的に自立する(家庭総合・2年)
 
   
  2.実習をともなう校内外での実践          
   本校の生徒はまじめで,授業も落ち着いている。ただ,概して理論の学習は苦手な傾向があり,反復しないと定着しにくい面があるので理論的な学習には時間がかかる。農業の専門高校であるため,実習を伴う科目も多く,農産品や林産加工品の販売なども行っている。今年度は消費者の視点に加え,生産者・販売者としての視点を入れて体験的な学習を行った。具体的な内容は以下のとおりである。
 
  ・農業の授業や課外活動で生産したキーホルダー・プレート・クリスマスボールなどの
 ラッピングを工夫。
・商品の価格設定をどのような要素を考慮して決定するかの学習。
・どのような価格表示や宣伝が消費者に誤解を与えることなくわかりやすいかを学習し実践する。
・商品展示用のイーゼルを作成し,よりよい販売環境を整備。
・実際の販売体験を行うことにより,消費者・販売者双方の視点から経済活動を考える。
 
   現在も農業高校ならではの販売を道の駅などで行っているが,特に「林業女子」という取り組みは3年目に突入し,その活動が広がっている。今年度の販売活動は神農祭(学校文化祭)・耕心祭・徳島ビジネスチャレンジメッセ・4K映画祭,市内中心部のボードウォークなどで行った。今後追加の参加依頼も期待される。また,本校の農産物販売所「そよかぜ」や学校近くのフードハブプロジェクトの会場などでの常設販売を目指している。
  3.日々の生活の中での実践
   SNSの発達で,情報管理が重要になっている。デジタルデータや個人情報の管理と整理はもちろんだが,学校内(生徒の回り)には膨大な紙データが存在する。必要なものかどうかの見極めと適切な保存・廃棄を実践することで,卒業後も特に契約に関するトラブルを回避できると考え,ファイリングの方法を学び実践した。

 効果と課題
   実践1年目に見えた課題を踏まえ,理論・実践の両面から学習を重ねてきた。生活に密着する「お金」に関する学習が多いので,関心を持った生徒が多いし,アルバイト先からマイナンバーの提示を求められるケースもよく耳にする。年金に関しては,「まだまだ先」という感じがあるのだが,二年続けて外部講師を招聘し,年金セミナーを実施したところ,少しずつ必要性を感じてきたように見受けられた。ただ,ローンとクレジットや金利については相変わらず「まだ用事がない」と感じている生徒は少なからずいるし,保険の学習では商品の多さと複雑さから自動車の任意保険の学習が中心になっている。
 金融・金銭に関する知識は社会生活を続ける上で欠かせないのだが,内容があまりにも多岐にわたり,高校三年間の教育課程のなかですべてを展開するのは困難であり,就学前からの継続的な学習の必要性を痛感している。また,お金の使い方や価値観は生育環境の影響をもろに受ける。高校では「これから家庭を創る人」としての教育を実践しているが,保護者や社会への啓発もまた大きな課題である。往々にして人は自分が実際に困らないと学習しないものである。今回の研究校としての実践は,学校として金融・金銭教育の重要性や必要性をより強く実感する契機となった。今後も限られた時間の中でさまざまな工夫を重ねていきたいと思う。
                                                                                                      (文責  笠井智恵)
 資料 実践2年目の風景
  ラッピング作業と販売を中心にご紹介します。   
   森林女子のキーホルダーは校外中心に販売しています。
   @ あり合わせのラッピングも改変    
   
       
   A生徒のラッピングプランを実現    
     
       
   ラッピング方法の検討作業と完成品
神農祭(学校文化祭)にむけて前年度の売れ残り品を再ラッピングして売る!
  いい作品なのになぜか売れ残り(>_<)

台紙をつけたらどうか・・・
       
  「あ〜でもない,こ〜でもない」
「これいいかも?」「うん,いける!」

 完成しました(^o^)
  笑顔で販売,ブローチは完売! その他の商品も好評でここ数年で一番の売り上げがありました。  
     
  神農祭では年金や実践活動に関する展示も行いました。  
    実際の通知をカラーコピーして解説 
     
   ラッピング実践の紹介 年金セミナーも毎年開催 
     
     
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